信号 「おい! 信号を無視するな!」 真っ昼間の繁華街。小ぶりなスクランブル交差点に、男性の怒声が飛んだ。その声は、交通ルールを守らぬ者への怒りではなく、強烈な警告にも似たメッセージに聞こえた。 少年は本日発売のゲームソフト…Read More » Posted on 2024年7月14日2024年7月14日 by admin Categories: 妄想するショートショート
マスターの小噺 – パニックにまつわるエピソード そこは都内某所。入り組んだ路地を抜けた先にある雑居ビルの七階。そのバーは人知れずそこにあった。インターネットにも一切の情報を公開していない、こじんまりしたバーだ。 軋む音をたて、入口のドアが開く。今宵もひとりの客が店を…Read More » Posted on 2024年6月23日2024年6月23日 by admin Categories: 妄想するショートショート
底辺観察TV 見渡す限り夢も希望もない。お先真っ暗なこの日本で真っ当に生きていたってしょうがない。金もない。人脈もない。才能もない。無気力な自分にできることなんて、何ひとつない。 だったらいっそ―― 散らかった部屋の中、ムズ痒い頭皮…Read More » Posted on 2024年6月9日2024年6月9日 by admin Categories: 妄想するショートショート
歌姫からの贈りもの 音楽業界に数々の記録を打ち立て、長きにわたり国民の人気を集め続ける歌姫。六十歳を過ぎた今もなお、そのパフォーマンスに一切の衰えは感じさせなかった。ただ、そんな彼女を病魔が襲った。入退院を繰り返す中で、残された命の短さを…Read More » Posted on 2024年5月26日2024年5月26日 by admin Categories: 妄想するショートショート
超ミニマリスト 「おじゃましまーす」 竹田は、友人である三崎の引っ越し祝いに、彼の家を訪れた。郊外にある清潔感漂うマンションの一室だ。「って、思ってた以上にこじんまりした部屋だな。前の家にあった荷物、全部入ったの?」「荷物? あぁ、ずい…Read More » Posted on 2024年5月12日 by admin Categories: 妄想するショートショート
エイプリルフールの悲劇 石田と西山は旅の途中、とある村に立ち寄った。それは高次の文化を持つ民族が暮らす村。名も知れぬ村とは思えないほど、立派な家々が連なっていた。 代わり映えしない日常に飽き飽きした二人。そんな日々から抜け出そうと、西山は石田…Read More » Posted on 2024年4月29日2024年4月29日 by admin Categories: 妄想するショートショート
桜花火 「そりゃ、がっかりするやろうなぁ……」 銀次は落胆する老若男女を目の前にし、ひどく同情した。 満開の桜を楽しみに、名所で知られる都市公園を訪れた花見客。予報もなく襲った金曜の夜の悪天候は、無惨なほどに桜景色を奪い去ってい…Read More » Posted on 2024年4月14日2024年4月14日 by admin Categories: 妄想するショートショート
危険な魔法 「いったいどういうことなの!?」 明らかに取り乱した様子の甲高い声。壊れんばかりの音とともに、職員室のドアが乱暴に開けられた。そこに立っていたのは、怒りで全身を震わせる中年女性。私が担任するクラスの生徒の母親だ。「早く説…Read More » Posted on 2024年3月17日2024年3月17日 by admin Categories: 妄想するショートショート
空に舞い戻る雪 窓の外に広がっていたのは、それはあまりにも異様な光景で、僕は思わず外へと飛び出した。空から降るはずの雪が、あろうことか、地上から空へと舞い戻っている。一面の銀世界が空に吸い込まれていく。 まだ子供だった僕は、眼前の奇妙…Read More » Posted on 2024年2月25日2024年2月25日 by admin Categories: 妄想するショートショート
緊張ブレイキングダウン 全身に浴びせられる拍手と温かい声援。それはどんどんと大きくなり、僕を包み込む。 まだダメだ。まだダメだ。目を開けるな。落ち着け、落ち着け! 固く目を閉じたまま深々と一礼をする。それに呼応するように膨れ上がる声援。意を決…Read More » Posted on 2024年2月12日2024年2月12日 by admin Categories: 妄想するショートショート