大掛かりな仕掛け その時、俺は玄関のドアをかすかに開いて、廊下の様子を伺った。 ――なんだ、やっぱり誰もいないじゃないか……―― 俺の部屋の隣は、空室になっているはずだ。もう長いこと借り手がついていない。 今日の昼間も誰もいなかったはずな…Read More » Posted on 2014年2月15日 by admin Categories: 妄想するショートショート
笑劇竹取の物語 ほんの少し昔のある日、竹取の翁という者がいた。野山に入って竹を取っては、それをいろいろな事に使っていた。 その日も普段通り、野山に入って、せっせと竹を取っていると、少し先の方に根元が光る竹が一本あるのを見つけた。 はて、…Read More » Posted on 2014年2月8日 by admin Categories: 妄想するショートショート
ある物語のはじまり むかしむかしのある晴れた日の午後、山のふもとの村で暮らす少年は、一面覆われた雪に自分の足跡をつけて遊んでいました。少し硬くなりはじめた粗目雪に身体の重みをのせてみると、ザクッザクッと小気味の良い音が鳴るので、まるで楽器で…Read More » Posted on 2014年2月1日 by admin Categories: 妄想するショートショート
パラレルな世界の住人 それはタケルが横断歩道を渡ろうとした時だった。ハンドルの制御を失い狂気を帯びた車が、スピンしながらタケルの身体に襲いかかってきた。激突の生々しい音が辺りに鳴り響いた後、道路の上には、突き飛ばされ横たわるタケルの身体と、二…Read More » Posted on 2014年1月26日 by admin Categories: 妄想するショートショート
情報化社会の崩壊 「これは悲惨なことになるぞ……」 ある研究所に勤務する老博士は、天井を見上げながらボソリと呟いた。 「そうですね……。これはある種の、情報化社会の崩壊を意味しますね……」 老博士の隣で立ちすくむ若い助手が、青ざめた表情で…Read More » Posted on 2014年1月18日 by admin Categories: 妄想するショートショート
十二の刻印 「もう十二時になる…。そろそろ帰らないといけないよ…」 ある国の王子様と、またある国のお姫様は、恋に落ち、清らかな思いで愛し合っていましたが、お互いの国の決め事により、夜の十二時になる前にそれぞれの国に帰らねばならないと…Read More » Posted on 2014年1月11日 by admin Categories: 妄想するショートショート
自分探しの終結 俺の自分探しの旅の終結を話したいと思う。 「こんな腐った社会で、歯車のように自分をすり減らしながら生きるなんて、まっぴらごめんだ。俺は社会に反骨精神剥き出して生きてやる」 俺はずっとそう息巻いていたんだ。 別にカッコつけ…Read More » Posted on 2014年1月7日 by admin Categories: 妄想するショートショート
粋な計らい 駅前の喧騒を抜け、裏道を十分ほど歩いたところに、そのバーはある。 四人が並んで飲めるほどのカウンターは、無垢材が醸し出す木の質感が心地良く、いくつもの孤独な宴を見守ってきたその年輪は、レトロな雰囲気と温かさを醸し出してい…Read More » Posted on 2013年12月21日 by admin Categories: 妄想するショートショート
夢の空気入れ 「そうなんじゃ。この空気入れ機はのう、夢をパンパンに膨らませてくれる空気入れなんじゃよ」 辛子色のカーディガンを羽織り、白い顎ひげを蓄えた、小柄な自転車屋の店長は、来店した客の男に向かってそう言った。 「へえ。そうなんで…Read More » Posted on 2013年12月7日 by admin Categories: 妄想するショートショート
まるで永遠かのような時間 小さく揺れる、帰りの電車の中。 「なんだろうね、この感じ。今日のデート、すっごく長い時間に感じたなあ。時間を気にせずに、のんびり過ごせたからかなあ?」 隣でマキは、今にもこぼれ出しそうな笑みを、目元に浮かべ、見上げながら…Read More » Posted on 2013年12月1日 by admin Categories: 妄想するショートショート