夏の夜、ピストルを強奪せよ 「じゃあ、俺たちが、おっさんの気を逸らせてる間に、お前がピストルを奪えよ!絶対に、うまくやれよなっ!」 順平が俺に言った。 「わかってる……」 空き地に積まれた大きな土管の中、とめどなく流れる汗に気にもせず、延々と作戦会…Read More » Posted on 2014年9月13日 by admin Categories: 妄想するショートショート
手切れ金 「君みたいな貧しい男と付き合ってても、彼女は幸せになんかならないからな……」 見るからに高級そうなスーツに身を包んだ男は、吐き捨てるように僕に言った。 「どうゆうことですか?」 「あんた、相当鈍いなぁ……」 男は面倒臭そ…Read More » Posted on 2014年9月6日 by admin Categories: 妄想するショートショート
誰かのためになること 「俺、例のやつ来ちゃったみたいなんだ。足元から薄くなってきてる」 私に微笑みかけるようにして、そう呟いた。 彼はフローリングの上に置かれた丸テーブルにちょこんと向かいながら、自主制作版のCDジャケットを手描きしている。 …Read More » Posted on 2014年8月31日 by admin Categories: 妄想するショートショート
美男美女計画 「美男美女以外は、この日本から、容赦なく隔離します」 国家の方針として、それが発表された瞬間、日本国内に激震が走った。 今後の日本の景観を考えると、人としての見た目の醜さも、景観を損なう要因のひとつだとされ、この怖ろしい…Read More » Posted on 2014年7月21日 by admin Categories: 妄想するショートショート
ある再会の風景 「どう?ここのパンケーキ、美味しいでしょ?ココナッツシロップが入ってるクリームがポイントなのよねっ」 風が心地いい昼下がり。街外れに佇む、洋風のカフェで友だちと過ごす時間。日常の喧騒を忘れられるこの時間がとても好き。 「…Read More » Posted on 2014年7月6日 by admin Categories: 妄想するショートショート
影に飲み込まれる世界 娘はそっと花を摘みあげた。 「キレイ……」 もうどれくらい登っただろうか。想像よりもはるかに勾配がきついこの山は、登る者の体力をどんどんと奪って行く。でも、登らなきゃ。使命感が娘の足を、上へ上へと進ませた。 「はて?こん…Read More » Posted on 2014年6月22日 by admin Categories: 妄想するショートショート
覚めない夢 「僕は、飛べる……」 自分に言い聞かせるように、そう小さく呟き、コンクリートの角を力強く蹴った。 見慣れた街並みが他人事のように小さく見え、経験したことのない解放感が身体を包む。 鳥になった気分だ。僕は今、空にいる。 空…Read More » Posted on 2014年6月15日 by admin Categories: 妄想するショートショート
同窓会 「ほら!卒業アルバム、持ってきたぜ!」 そう言って木村がテーブルの上に広げたのは、俺たちが小学生の頃の卒業アルバムだった。 濃紺の生地表紙に、希望という文字が箔押しされた、なかなか貫禄のあるアルバムだ。 卒業から三十年が…Read More » Posted on 2014年6月7日 by admin Categories: 妄想するショートショート
つきまとう影 『今日もあなたのこと、ずっと見てました』 そう書かれた不気味な手紙が手元に届いてから、もう二週間近くが経つ。 夜、いつもの場所に向かう俺は、手紙の差出人の視線がどこかにあるかも知れないと、普段よりも辺りを警戒しながら歩い…Read More » Posted on 2014年5月31日 by admin Categories: 妄想するショートショート
隣人の歯ぎしり 夜になると隣人の歯ぎしりが、ギシギシと響いてくる。不快で眠れないというほどのものではないが、みんなが寝静まった頃を見計らっているかのように、その歯ぎしりは毎夜聞こえてくる。悲しいほどに一定のリズムで、それは鳴る。 ――そ…Read More » Posted on 2014年5月25日 by admin Categories: 妄想するショートショート