同業者 マジシャンの男が、慣れた手つきで、次々にカードを配る。酔いも手伝って、バーの雰囲気は、余計に謎めいて感じる。 隣に座る友人に誘われてやって来たのは、町の繁華街の中で、最も有名なマジックバー。 目の前で一流のマジックが見ら…Read More » Posted on 2015年12月5日2015年12月5日 by admin Categories: 妄想するショートショート
或る広告屋の仕事 「崖……。崖に行きたいんですけど」 血色を失った表情の若者が尋ねてきた。 「そうねぇ。あそこにポストが見えるでしょ? あそこを右に曲がって真っ直ぐ行けば、崖が見えてくるけど……」 この道案内を何度してきただろうか。 「…Read More » Posted on 2015年8月16日 by admin Categories: 妄想するショートショート
夢の中 眠ってしまえば、生きる望みさえないこの現実から逃げることができる。生きていても楽しいことなんて、何一つない。代わり映えすることもない。何もないんだ。 枕元の携帯電話が鳴った。 休みだというのに、得意先からだ。背面の液晶に…Read More » Posted on 2015年8月1日2015年8月1日 by admin Categories: 妄想するショートショート
桃色の藁人形 あの人が美鈴と付き合うなんて許せない。 「おつかれさま」 「シホ、最近なんだか疲れてない? なんか悩みとかあるんだったら聞くよ?」 同僚の佐々木洋子が疲れ顔のシホを心配して言った。 「ううん。大丈夫だよ」 「隠してても分…Read More » Posted on 2015年7月5日 by admin Categories: 妄想するショートショート
不毛な争い こんなにも無意味な争いをする必要があるのか? 人間という愚かな生き物は、どうしてこんなにも争いというものを好むのだろうか。 こんな風に傷つけ合ったり奪い合ったり、不毛な争いをしなくたって、もっと利口な方法で白黒つける…Read More » Posted on 2015年6月13日2015年6月13日 by admin Categories: 妄想するショートショート
理不尽な負担 まだ六月だというのに、もう汗が止まらない。アキバまで出るのも一苦労だ。 時計に目をやると、ライブの開始時刻まで、あと十五分しかない。 「マズイなぁ……」 残業を命じてきやがった上司の憎たらしい顔を思い浮かべながら、歩く速…Read More » Posted on 2015年6月7日 by admin Categories: 妄想するショートショート
大エンターテインメント 彼の少し痩せた指が、一通の白い書類を摘み上げた。 「クソッ……」 封筒の中から取り出した書類に書かれた文字を見て、彼は瞬く間に顔色を失った。 ベランダから西の空を見上げる。 彼が乗せられたロケットが発射される。 地球の規…Read More » Posted on 2015年5月31日2015年5月31日 by admin Categories: 妄想するショートショート
たったひとつの記憶 「たったひとつだけ。失った記憶を取り戻せそうだけど、どうする?」 真っ白な壁に覆われた息苦しい診察室。 厳しい目つきの女医が僕に問いかける。 「彼女の若年性認知症の症状は、いつ頃から出始めたの?」 「確か、半年…Read More » Posted on 2015年5月24日 by admin Categories: 妄想するショートショート
地球大選挙 それは圧巻過ぎる光景だったよ。 この地球を棲みかとする全ての生き物たちが、地面の中から、広大な空から、静まりかえった沼地から、あらゆる場所からゾロゾロと集まってきたんだから。 見たこともない模様の巨大な動物や、普段は他の…Read More » Posted on 2015年5月17日 by admin Categories: 妄想するショートショート
出待ち 「菊池の奴、見なかった?」 「そういや、まだ見てないなぁ」 初夏。走り始めたばかりの暑さが、肌の表面にじんわりと汗を滲ませる。 卒業してから一度も催されたことのなかった高校の同窓会が、老舗温泉地の一角で開かれた。高校を卒…Read More » Posted on 2015年5月2日 by admin Categories: 妄想するショートショート