巡りめぐる階段 「彼、いや、君を見つけたら、何が何でも説き伏せるんじゃぞ。分かったな」 たまたま飛び込んだ占いの館で、まさかこんなことになるなんて。目の前の胡散臭い老人に促されるまま、疑り深い足取りで部屋の奥へと進み、薄いカーテンをめく…Read More » Posted on 2016年2月14日2016年2月14日 by admin Categories: 妄想するショートショート
革命のあと 槍の柄を握る手に力を込めてみる。ささくれ立った木の感触は、野蛮なものに触れたこともない僕の手に、未知なる痛みを与えた。 窓の外には男たちの叫び声が響き、昨日まで当たり前の日常が流れていた小狭いマンションの一室には、突き刺…Read More » Posted on 2016年1月11日2016年1月11日 by admin Categories: 妄想するショートショート
ラスト・イルミネーション 贅沢に絵の具のインクを使いきったみたいに、さまざまな色の電球が、僕らの歩く道を照らしている。遠くのほうには、煌々と輝く、お城。水面に映る電球の灯りが、風の作る振動に、ゆらゆらと揺れている。 恋人の余命は、あと数分。 今夜…Read More » Posted on 2015年12月20日 by admin Categories: 妄想するショートショート
同業者 マジシャンの男が、慣れた手つきで、次々にカードを配る。酔いも手伝って、バーの雰囲気は、余計に謎めいて感じる。 隣に座る友人に誘われてやって来たのは、町の繁華街の中で、最も有名なマジックバー。 目の前で一流のマジックが見ら…Read More » Posted on 2015年12月5日2015年12月5日 by admin Categories: 妄想するショートショート
或る広告屋の仕事 「崖……。崖に行きたいんですけど」 血色を失った表情の若者が尋ねてきた。 「そうねぇ。あそこにポストが見えるでしょ? あそこを右に曲がって真っ直ぐ行けば、崖が見えてくるけど……」 この道案内を何度してきただろうか。 「…Read More » Posted on 2015年8月16日 by admin Categories: 妄想するショートショート
夢の中 眠ってしまえば、生きる望みさえないこの現実から逃げることができる。生きていても楽しいことなんて、何一つない。代わり映えすることもない。何もないんだ。 枕元の携帯電話が鳴った。 休みだというのに、得意先からだ。背面の液晶に…Read More » Posted on 2015年8月1日2015年8月1日 by admin Categories: 妄想するショートショート
桃色の藁人形 あの人が美鈴と付き合うなんて許せない。 「おつかれさま」 「シホ、最近なんだか疲れてない? なんか悩みとかあるんだったら聞くよ?」 同僚の佐々木洋子が疲れ顔のシホを心配して言った。 「ううん。大丈夫だよ」 「隠してても分…Read More » Posted on 2015年7月5日 by admin Categories: 妄想するショートショート
不毛な争い こんなにも無意味な争いをする必要があるのか? 人間という愚かな生き物は、どうしてこんなにも争いというものを好むのだろうか。 こんな風に傷つけ合ったり奪い合ったり、不毛な争いをしなくたって、もっと利口な方法で白黒つける…Read More » Posted on 2015年6月13日2015年6月13日 by admin Categories: 妄想するショートショート
理不尽な負担 まだ六月だというのに、もう汗が止まらない。アキバまで出るのも一苦労だ。 時計に目をやると、ライブの開始時刻まで、あと十五分しかない。 「マズイなぁ……」 残業を命じてきやがった上司の憎たらしい顔を思い浮かべながら、歩く速…Read More » Posted on 2015年6月7日 by admin Categories: 妄想するショートショート
大エンターテインメント 彼の少し痩せた指が、一通の白い書類を摘み上げた。 「クソッ……」 封筒の中から取り出した書類に書かれた文字を見て、彼は瞬く間に顔色を失った。 ベランダから西の空を見上げる。 彼が乗せられたロケットが発射される。 地球の規…Read More » Posted on 2015年5月31日2015年5月31日 by admin Categories: 妄想するショートショート