ある老夫婦の別れ 日本が長寿国家になって久しい。 吉蔵も例に漏れず、このたび百一歳を迎えることとなった。昔であれば長命を派手に祝われでもしたのだろう。しかし今では、そう珍しいことではなくなった。 三寒四温を過ぎ、春らしい日々がおとずれた…Read More » Posted on 2025年3月30日 by admin Categories: 妄想するショートショート
神から与えられしギフト 「ほうら、お空から降ってきた、降ってきた! 立派なギフトがお空から降ってきたよ!」 母にぴたっとくっつき、かすかな寝息をたてる赤ん坊。ベッドのまわりには、生まれたての我が子を見守る父、妹の誕生に浮かれる長男、そして母方の…Read More » Posted on 2025年3月16日2025年3月16日 by admin Categories: 妄想するショートショート
死の涙 得意先からの帰り道。女は駅までの道のりをショートカットするため、途中にある児童公園を横切ることにしている。 午後4時。その日も公園に足を踏み入れた。昨日降った雨のせいで、足元の土がゆるい。 楽しげに遊ぶ子どもたちの甲高…Read More » Posted on 2025年2月23日2025年2月23日 by admin Categories: 妄想するショートショート
空に打ち上がる冬の大輪 ある冬の朝、アート雑誌に掲載するインタビュー記事を書くために、男は画家のM氏のアトリエを訪れた。「先生のモチーフは一貫して――」「冬の朝だよ」 壁はもちろんのこと、梁までもが白くペイントされた空間。他の色が一切排除され…Read More » Posted on 2025年2月9日 by admin Categories: 妄想するショートショート
前しか見えない なんだこの景色は? もしかして、いつかの学校の帰り道か? おいおい。いったい、どういうことだ? こんなの望んじゃいないぞ……別のはどうだ? ただひたすらに視界に映る天井。見慣れた天井ではあるが、こんなもの望んじゃいない…Read More » Posted on 2025年1月26日2025年1月26日 by admin Categories: 妄想するショートショート
ママとおかたづけ 「ママ! Eはどこにお片づけすればいいのーー?」 キッチンに立つ母親は、グツグツと煮立つ鍋を見つめながら、娘の声を背中で聞いている。「なになにー?」「Hiの場所もわからないよぉ~」「ちょっと待ってねー」 娘の困った顔を思…Read More » Posted on 2025年1月12日2025年1月12日 by admin Categories: 妄想するショートショート
ようこそ、約束の場所へ 頭を掻きむしりながら時計に目をやる。もうすぐ日付が変わりそうだ。他の社員たちはとっくに帰ってしまった。昼間の喧騒からは想像もつかない静けさ。がらんとしたオフィスには男がひとり。パソコンのモニタライトの光が、くたびれた男…Read More » Posted on 2025年1月5日2025年1月5日 by admin Categories: 妄想するショートショート
変わり果てた天使 くたびれた夜を走る、乗客もまばらなローカル電車。俺はある中年男性の隣に腰掛け、耳打ちした。「やりたいんだろ?」 突然のことに虚をつかれたのだろう、男は体をビクつかせた。「心配はいらない。俺は天使だ。お前さんの中にある善…Read More » Posted on 2024年11月10日 by admin Categories: 妄想するショートショート
悲願の討伐 「よかったら仲間になってくれないか?」「なかま?」 背格好の低いキジと目線を合わせるよう、深くしゃがみ込んだ勇者が手を差し出す。「知ってのとおり、島の向こうには、悪の権化である鬼が棲息している。ヤツらの気性を思えば、いつ…Read More » Posted on 2024年10月14日2024年10月14日 by admin Categories: 妄想するショートショート
山場師 その老父は噂どおり、人里離れたこの山奥で生活をしていた。都市伝説まがいのネタを取材するほど暇じゃない。ただ、手つかずのお宝は喉から手が出るほどに欲しい。そんなライター魂が、俺の足をここまで運ばせた。「――で、あなたが山…Read More » Posted on 2024年9月16日2024年9月16日 by admin Categories: 妄想するショートショート