リアル脱出ゲーム 「みなさんを導く標識がありますんで、目を凝らしてしっかりチェックしてくださいね。生き残りをかけた道を選びながら、生きて、脱出してくださいっ!」 ボーイスカウト風の制服を着たスタッフの男が、無垢な笑顔で声を張り上げる。それ…Read More » Posted on 2016年11月3日 by admin Categories: 妄想するショートショート
大切なもの 「これ、お前の眼鏡か?」 胸が締め付けられた。呼吸がどんどんと浅くなり、怒りがこみ上げた。 「え……?」 キッチンに立つ妻は、こちらを見もせずに、小さな声だけ発した。 「お前、眼鏡なんてかけたことないだろ? 持ってる…Read More » Posted on 2016年8月14日 by admin Categories: 妄想するショートショート
夏の寒さ 「それにしても、日本語が上手ですなぁ」 テーブルの上に並ぶ日本の工芸品。岸本忠夫は、彩り多い工芸品に興味を示す男女四人の外国人たちを、朗らかに見つめている。 「日本ノ音楽ガスキデス。音楽ヤ漫画デ日本語ヲ勉強シマシタ」 …Read More » Posted on 2016年7月23日 by admin Categories: 妄想するショートショート
時がつながる ほんとにこんなサービスがあったんだ。知らなかったな、今まで。 藤崎琴美は、店の外観を眺めた。少し緊張しながら、自動ドアをくぐる。 「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ。お好みの数字をプッシュしていただきますと、お電話…Read More » Posted on 2016年7月17日 by admin Categories: 妄想するショートショート
生命保険 「本日、午後四時過ぎ。M町の繁華街において、乗用車が暴走する事故がありました。現在のところ、死傷者は十五名。救急隊が現場に駆けつけたところ、歩道に乗り上げた車が、コンビニエンスストアに突っ込んだまま停車。歩道に乗り上げた…Read More » Posted on 2016年6月19日 by admin Categories: 妄想するショートショート
名刺をお貸ししましょうか? 「よろしければ、私の名刺をお貸ししましょうか?」 四十億円の巨大プロジェクト。その運命がこれから決まるというのに、僕は何てことをしてしまったんだ。名刺を持ってくるのを忘れてしまうなんて。 「どちら様でしょうか……?」 「…Read More » Posted on 2016年5月1日2019年5月25日 by admin Categories: 妄想するショートショート
時計の中心では 男は、こんもりと白髭を蓄えた老人に、そっと耳を近づけた。 「かれこれ七十年近くになるわなあ」 老人は記憶を逡巡させているのか、親指から順に指の節を揉み始めた。 「そうじゃ。驚きの事実を話してやろうか」 老人は丸い目をさら…Read More » Posted on 2016年3月19日 by admin Categories: 妄想するショートショート
巡りめぐる階段 「彼、いや、君を見つけたら、何が何でも説き伏せるんじゃぞ。分かったな」 たまたま飛び込んだ占いの館で、まさかこんなことになるなんて。目の前の胡散臭い老人に促されるまま、疑り深い足取りで部屋の奥へと進み、薄いカーテンをめく…Read More » Posted on 2016年2月14日2016年2月14日 by admin Categories: 妄想するショートショート
革命のあと 槍の柄を握る手に力を込めてみる。ささくれ立った木の感触は、野蛮なものに触れたこともない僕の手に、未知なる痛みを与えた。 窓の外には男たちの叫び声が響き、昨日まで当たり前の日常が流れていた小狭いマンションの一室には、突き刺…Read More » Posted on 2016年1月11日2016年1月11日 by admin Categories: 妄想するショートショート
ラスト・イルミネーション 贅沢に絵の具のインクを使いきったみたいに、さまざまな色の電球が、僕らの歩く道を照らしている。遠くのほうには、煌々と輝く、お城。水面に映る電球の灯りが、風の作る振動に、ゆらゆらと揺れている。 恋人の余命は、あと数分。 今夜…Read More » Posted on 2015年12月20日 by admin Categories: 妄想するショートショート