囚われの美女 僕の手に、そっと先生の手が添えられた。絵筆を持つ僕の手は微かに震え、それを包むように制する先生の優しさを感じる。ゴクリと唾を飲み込み、緊張を抑える。徐々に大きく弾む感情。汗ばんだ手。心の乱れが絵に影響しないよう、慎重に空…Read More » Posted on 2019年12月15日2019年12月15日 by admin Categories: 妄想するショートショート
深夜バイト 「日当5万円!?」 「そうなんだよ。しかも、勤務時間はたったの30分くらいなんだよねぇ」 自慢気に語る友人の田中。どうやら先月から高給がもらえる深夜バイトを始めたらしい。噂を聞きつけた俺は田中を呼び出し、根掘り葉掘り聞き…Read More » Posted on 2019年12月15日2019年12月15日 by admin Categories: 妄想するショートショート
放課後グラフィティ 美咲と伊織は放課後、窓側の席に腰掛け、グラウンドの活気を眺める。部活中の生徒たちが発する熱のこもった声は、校舎の4階まで響いてくる。秋の終わりと冬の訪れを同時に感じさせる風が、二人の髪を優しく揺らした。 「もうすぐ卒業っ…Read More » Posted on 2019年11月24日2019年11月24日 by admin Categories: 妄想するショートショート
アナザーワールド それは、ある日の通勤途中。人混みにもまれながら会社に向かっていると、追い抜きざまに誰かが僕に肩をぶつけてきました。その男は振り返ると、不敵な笑みを浮かべたのです。何よりその顔は僕にそっくりでした。いや、顔がそっくりなので…Read More » Posted on 2019年11月10日2019年11月10日 by admin Categories: 妄想するショートショート
じゃんけん タケシはいつもポケットにジャラジャラと石を入れて持ち歩いていた。機嫌を損ねると、友達だろうが建物だろうが容赦なくそれを投げつけた。おじいちゃんから聞かされた学生運動に参加したときの武勇伝。感化されたタケシは、真似するよう…Read More » Posted on 2019年11月9日2019年11月9日 by admin Categories: 妄想するショートショート
死してなお、芸人 その葬儀は、見事なほど盛大に営まれた。 故人の名は〈六代目菊家秋団治〉。人間国宝に認定された偉大な落語家だ。 壇上には笑みをたたえる秋団治の巨大な遺影。そして故人が眠る棺。会場には800人を超す参列者の姿があった。 秋団…Read More » Posted on 2019年10月19日2019年10月19日 by admin Categories: 妄想するショートショート
転校生 「夏木陽子です。よろしくお願いします!」 ある朝、アイツは転校生としてこのクラスに現れた。事前に周知されていなかったから、教室は浮足立つようにざわついた。 もし私が転校生の立場だったら、初登校の朝は憂鬱で仕方がないだろう…Read More » Posted on 2019年9月15日2019年9月15日 by admin Categories: 妄想するショートショート
ツクリモノ 天を仰いでも、あなたは手を差しのべてくれない。そして、私の世界は破壊される。所詮、私は作り物だから。 飲みすぎた昨夜の飲み会。酔った余韻を引きずる身体が重い。ローヒールのパンプスで来ればよかったと、笠谷美穗は少し後悔した…Read More » Posted on 2019年8月25日2019年8月25日 by admin Categories: 妄想するショートショート
糸と地球 「ブドウの軸って、糸という漢字に似てます」 彼女の日本語はとても流暢だ。インドネシアから日本に来てまだ一年も経っていないという。母国語はもちろん、英語も話せて日本語も簡単なコミュニケーションなら苦労しない。その勤勉さには…Read More » Posted on 2019年8月25日2019年8月25日 by admin Categories: 妄想するショートショート
ひんやりとした嘘 あれは先月のお盆休みのことでした。 姉の夫婦はお互い多忙で旅行の計画がたてられず、気づけばお盆休みに差しかかろうとしていたそうです。 二人は結婚二年目の夫婦。仕事の都合もあり、豪華な新婚旅行などには行けず仕舞い。夫婦水入…Read More » Posted on 2019年8月12日2019年8月12日 by admin Categories: 妄想するショートショート