ヤツはこのアジトに戻ってきた。 「お前、刑務所に入ってるんじゃ……」 「脱走してきたよ」 と、ヤツは涼しい顔。 「刑務所にでっかい穴があったのさ」 「まさか。映画の世界じゃあるまいし」 「堂々と脱獄してやったよ」 「堂々…Read More »

もう、何もかもがイヤになったんだ。 だからこうして部屋の隅で三角座りしている。 日の当たらない場所でウジウジ、ジメジメ。 「あっ」 涙がこぼれてきた。 ポロポロ。 湿っぽくて陰鬱。 気づけば僕の体はバラバラに分離する。 …Read More »

「やっと帰国できるよ」 異国との別れを惜しみつつも、男は母国への郷愁をにじませた。 「日本に帰ったら何がしたい？」友人が尋ねる。 「おふくろの味を堪能したいね」 帰国後、男は実家を訪ねた。 「おかえり」母が笑顔で出迎える…Read More »

男は窓から空を見上げた。 そこには巨大隕石が。 あと数分で地球に隕石が衝突する。 そう。今日は地球滅亡の日。 絶望的な状況とは裏腹に、男はどこまでも冷静だった。 「僕は死なない」 手のひらを見つめ、ニヤリと笑う。 クッキ…Read More »

「腹一杯食ったなぁ」 今日は夢を見ている人が多かった。 おかげで満腹。なんだか眠くなってきた。 バクは好物の夢をたくさん食べて、うとうと居眠り。 よほど幸せだったのだろう。 野原を散歩する夢を見て、笑みをこぼしている。 …Read More »

本でも読みながら移動するか。 自動運転が搭載されてからというもの、随分と楽になった。 男は乗り込むと、行き先を入力した。 しばらくして異常が発生。 上下左右に激しく揺れる。 気づけば男は外に投げ出されていた。 「こ、ここ…Read More »

わたし、ラブレターは手書き派なんですの。 女はお気に入りのペンを取った。 愛する男を思い浮かべ、筆を走らせる。 便箋の上には流麗な文字が並んだ。 彼への想いをしたため、何度も読み返す。 よしッ！ スキャナーへと便箋をセッ…Read More »

「田中くん、ちゃんと先生の説明聞いてる？」 「あっ」 「今、どの問題かわかる？」 「……」 「オンライン授業だからって、気を抜かないように」 先生の話なんて全く聞いてなかった。 画面の中に並ぶ生徒たちの顔。 僕は佐々木さ…Read More »

「几帳面な人間の家に盗みに入るのは楽でいいぞ」 「そんなもんかねぇ？　逆にセキュリティが堅そうだが」 「真逆さ」 泥棒はある家に盗みに入った。 「ほら」 「ん？　ただの紙切れじゃないか」 「そう。紙切れ一枚で済むんだ」 …Read More »

時代とともに、教育のあり方も変わった。 今じゃ生徒たちは、自宅でオンライン授業。 パソコンのモニタに映る、先生の授業風景。 算数、英語、国語、理科、社会。 担当教師たちが、黒板の前で授業を行う。 「次の授業は何だっけ？」…Read More »