「あのバカ！」 出張準備を妻に任せた男が愚痴る。 カバンには男のものではなく妻のパンツが。 しぶしぶ女性下着に足を通す。 休息を破るようにインターホンが鳴った。 警官の姿。 「館内で下着泥棒が出ましてねぇ」 気が動転した…Read More »

僕たちはいつも監視されている。 真っ暗闇に凄む大勢の光る目。 その目は無表情で僕らを監視する。 ただ、時に笑ったり泣いたりするときもある。 ひとしきり監視されたあと、その幕はゆっくりと下りる。 世界を遮断するように。 ポ…Read More »

彼はサッカーをこよなく愛していた。 残業で見られなかった国際試合の大一番。 録画を楽しみに帰宅する。 結果が耳に入らぬよう誰とも会話せず。 スマートフォンにも一切目を通さない。 最寄り駅に着きタクシーに乗車した。 ホッと…Read More »

生きる望みを失った男の元に届いた小包。 空飛ぶ羽？ 着用すれば空が飛べるらしい。 人生に何の未練もない男は、ビルの屋上からジャンプしてみた。 飛んでる！ １回、２回、３回と飛ぶうちに、生きる活力が湧いてきた。 よし、もう…Read More »

地球最後の日は、家族で食卓を囲んで迎えたいよ。 夫はあらぬ日を妄想し、冗談めかしていた。 ──まさかその日がやって来るなんて。 地球最後の日。 覚悟を決めた私たちは落ち着いていた。 夫の望み通り、食卓を囲み家族団欒。 私…Read More »

手作りクッキー、食べてないでしょ？ 彼女は彼を問い詰めた。 食べたよ！ 主張する彼。 嘘つき！ 彼は些細な嘘を悔やんだ。 ほんとのことを言えばよかった。 弟が食べてしまったと。 でも、なぜ嘘がバレたのか？ 彼女は舌打ちし…Read More »

あるＷＥＢサイトを通じ、男にメールが送りつけられた。 「お前を殺害する」 紛れもない殺害予告。 男は弁護士会照会を通じ、ＩＰアドレスの開示を請求した。 数日後、弁護士が自宅を訪れる。 「どうやら発信元は──」 言い淀む弁…Read More »

「１０６号室になります」 老婆は山奥の宿を訪れた。 「では、後ほど」 そう言い残し、宿主は部屋を後にした。 真夜中に男女の悲鳴が響く。 「ご苦労さまでした」 宿主は老婆に報酬を手渡す。 ここはお化けが出ると口コミで話題の…Read More »

彼らは惑星を旅して回っている。 惑星には個性があって実に興味深いな。 さっきまでいた惑星の余韻に浸るふたり。 近くに地球ってのがあるが、まだ入るか？ 俺はまだ入るよ。地球には何があるんだい？ 塩、醤油、味噌。 他には？ …Read More »

貴婦人が真夜中に目を覚ます。 ベッドの脇にはヴァンパイアの姿。 瞬く間にその牙が首元に。 悲鳴が断末魔に変わる。 吸血鬼は満足そうに血を吸い切った。 貴婦人の城を後にし、颯爽と車に乗り込む。 今宵の収穫を祝うように、腕を…Read More »