家を持たないその男は、空き家を転々とし雨露をしのいでいた。 今夜は町外れの邸宅。 下調べしたはずなのに、玄関で物音が。 男は慌てて屋根裏に逃げ込んだ。 「今日は３人殺ったな」 ドスのきいた声が室内に響く。 「いや、今日は…Read More »

咲子はアプリのスライダを移動させた。 20年後の自分の顔をシミュレーションしてみる。 「あれ？」 画面には何も表示されない。 友人が試すと、老けた顔が表示された。 もう一度試す咲子。 10年後も。 ５年後も。 １年後も、…Read More »

ウチのおかあちゃんの教育方針は変わってる。 他人に助けてもらえる人間になれって。 今日は遠足。 僕の弁当箱は空っぽ。 友達からおかずを分けてもらえる人間になれってさ。 弁当箱を片手に声をかける。 「おかず分けてくれない？…Read More »

彼女と初めての花火デート。 打上花火を見つめ、ロマンチックな時を過ごす。 「おい！」 ガラの悪いおっさんが運悪く絡んできた。 雰囲気ぶち壊すなよなぁ。 彼女は怯えてモジモジしてる。 「おい、コラッ！」 明らかにヤバそうな…Read More »

満員電車。 手が伸び、女性のお尻を狙う。 その手は卑猥に蠢く。 女性は耐えかね、尻を触るその手を後ろ手に掴んだ。 「この人、痴漢です！」 掴んだ手を掲げようとした。 「えっ？」 掴んでいたのは、もう片方の自分の手。 ひと…Read More »

女は下界を見下ろした。 あまりの高さに膝が震える。 もうどうなってもいい。 味方なんていない。 誰も女を止める気配はない。 むしろ早く飛べと願っているはずだ。 そんな世界はもういやだ。 運命に背中を押されるように宙を舞っ…Read More »

タイムマシンが完成して数年。 警察は過去にタイムスリップし、全ての犯罪を未然に防ぐことに成功した。 それに気づいた悪の組織。 同じように過去にタイムスリップし、新たな犯罪を遂行した。 先の未来から警察が。 そしてさらに先…Read More »

時刻通りの新幹線。 切符を確認し指定席に座る。 しばらくすると、生気のない中年男性が近づいてきた。 「そこ、僕の席なんですよ」 頭を下げ立ち上がる。 でも──切符は何度も確認した。 間違うはずない。 男は手にした切符を見…Read More »

ショーのラストは大掛かりなマジック。 両手足を縛られた状態で水槽から脱出。 観客が見守るなか、クールに縄を解こうと試みる。 が、様子がおかしい。 縄が解けない。 男は焦り、時間はどんどん経過する。 危険を察知したスタッフ…Read More »

「皆さん、ご覧ください！」 中年のマジシャンの男が１万円札を掲げる。 ビリビリと札を破りはじめた。 客席では思わず声を上げる者も。 破った札を丸め、再び開く。 その手には元通りの札。 男はショーを終え帰宅した。 「アンタ…Read More »