「脇に体温計をはさんでくださいね」 幼い子供は素直に医師の指示に従った。 安静にするため居間で絵本を読む子供。 なぜだか体が急に熱くなり、涙が溢れ出した。 これが感動というものか。 火照った体。思わず脇に体温計をはさんだ…Read More »

生きることに疲れた男が、祖父の営む古本屋を訪れた。 お目当ての本が見つかると評判の古本屋だ。 「おすすめの写真集があるよ」 祖父はそう言い残すと、店の奥へと消えて行った。 本棚を眺める男。 一冊の本が目にとまった。 「な…Read More »

男はイタズラを仕掛けることにした。 人間そっくりの精巧な人形をビルの屋上から落とす。 通行人は人間が落ちてきたと大騒ぎ。 世間の注目を集められる。 人形をかつぎ男は屋上へ。イタズラは決行された。 地上に響く悲鳴。 救急車…Read More »

自由に使えるお金。食べても太らない体。そして片思いの彼との恋愛。 彼女は眠りの中。 最初は夢の世界を満喫していたが、徐々に現実が恋しくなった。 でも目が覚めず、現実に戻れない。 心細くなり彼女は泣き崩れた。 「夢から覚め…Read More »

女医は患者の男に点滴を打つ。 全身麻酔によるオペ。 「聞こえますか？」 「はい」 男はハッキリと答えた。 しばらく待って、再び女医が声をかける。 またしても男の返事。 「仕方ない」 女医は一冊の本を手にし、男に添い寝した…Read More »

「この問題わかるひとー？」 教室の後ろに立つ保護者たちを前に、先生も緊張気味だ。 生徒たちは元気に手をあげる。 「じゃあ田中さん、答えてみよう！」 ――元気に頑張ってるじゃない。 授業参観の様子を見守るひとりの母親。 ―…Read More »

「イテッ」 男はじんわり血が滲む指先を咄嗟に咥えた。 紙は時に鋭利な刃物と化す。 「紙で指を切っちゃうと、地味に痛ぇんだよなぁ」 男はブツブツと呟いた。 それを見た妻が、１枚の紙を手に夫に近づいた。 「紙は指を切るだけじ…Read More »

織姫は短冊に願いを書き入れた。 〈今年こそ、彦星と会えますように〉 年に一度のチャンス。 しかし、無情にも雨に降られ、彼には会えなかった。 後日、願い事協会から通達があった。 願い事協会もグローバル化が進み、本部が海外に…Read More »

男は山奥に佇む小屋の扉を開いた。 先客らしき老人は呟いた。 「待ってたよ」 この小屋を訪れた者は、次の誰かが来るまで出られないらしい。 「次に誰かが来るのは二百年後か三百年後か――」 「そんなバカな！　その前に死んでしま…Read More »

「１日がもっと長かったらいいのに！」 多忙な彼はそう叫んだ。 彼の願いは叶い、彼だけが１日48時間を生きることに。 ただし１年で２年分、年を取る。 もちろん寿命は変わらない。 見た目はすっかり老人の彼は、45歳にして亡く…Read More »