「煩わしい人間関係さえなければ幸せなのに……」 まん丸い満月が輝く夜、男は呟いた。 願いは叶えられ、男は人間関係のない場所で暮らすことに。 そこは誰もいない宇宙。 その状況は自ら望んだもの。 文句は言うまい。 しかし――…Read More »

輪投げの輪を手に、豪快に構える子供。 「えい！」 残念ながら輪は意図せぬ方向に。 「くそ！」 もう一投。 「やった！　入った！」 「坊っちゃん、調子はどうだい？」 酔客が肩越しに覗き込む。 「お！　なかなかやるじゃないか…Read More »

「わぁ！　戻ってきた！」 青年は手にした万札を眺める。 数年前、好奇心から万札の右下に数字を書き入れた。 いつか手元に帰ってくればと期待を込めて。 「いろんな人の手に渡り、ここに帰ってきたんだね」 万札の旅を思い浮かべて…Read More »

彼はおみくじを引いた。 末吉。 おみくじの順番を待つ参拝客の列の最後尾に、再び彼は並んだ。 中吉。 再び並ぶ彼。 吉。 再び。 「大吉！」 彼は大きくガッツポーズした。 絶対に諦めないことが彼の信条。 おみくじに書かれた…Read More »

夫が私の顔をまじまじと見つめる。 成長した娘が、あまりにも似ていないからだ。 夫と私のどちらにも。 「隠しててごめんなさい」 そう。 私は過去に整形手術を受けた。 「そうか……」 夫はため息をついた。 ただ――娘が似てい…Read More »

やるなと言われればやってしまう。 そりゃ、押すなと言われれば押したくなってしまう。 そんな俺がなぜ、核爆弾の発射スイッチの管理担当に？ この性格には常に悩まされてきた。 どうにかして自分を変えたい。 生まれ変わりたい。 …Read More »

ある日、クラスメイトがいなくなった。 前触れもなく彼は姿を消した。 「西園寺くんは、お空の向こうに行ってしまったんだ」 先生は僕らにそう言った。 幼い僕らはその言葉からぼんやりと事態を察した。 火星に暮らす権利を得た上級…Read More »

「何もない大地に芽が出たんだそうだ」 「ほう？」 「希望が持てる話だろう？」 昼下がりの喫茶店。男たちは雑談をする。 「うらやましい限りだ。で、その後は？」 「あたり一面、びっしりさ」 「それはほんとの話かい？」 疑う男…Read More »

「い～ろい～ろ、何色？」 鬼が色を指定し、子供たちは一斉に逃げる。 公園にこだまする賑やかな声。 「い～ろい～ろ、何色？」 「青色ッ！」 子供たちは青色を探して全力で駆ける。 ひとりの子供が立ち止まり、ニヤッと笑うと、上…Read More »

魔女に生贄を差し出す儀式。 魔女は村の中で最も美しい女性を生贄に選んだ。 女性たちはそれを怖れ、整形手術を受けた。 自らの顔から美しさを奪うために。 競うように手術は繰り返される。 そして村からは美女が消えていった。 「…Read More »