インターフォンが鳴る。 モニタには警官の姿。 昼下がりの主婦は玄関のドアを開けた。 「警官を騙った住居侵入事件が、この辺で多発していますので注意してください」 夜のニュースで目にしたのは昼間の警官。 住居侵入罪で逮捕され…Read More »

お父さん、つまんない。 お父さんってなんか臭い。 お父さんのパンツとは一緒に洗濯しないでね！ 親として成長は喜ばしいもの。 娘も今じゃすっかり大人びた。 思春期ともなれば、父親という異性は気に触るものだ。 お父さんと同じ…Read More »

女はある瞑想プログラムに参加した。 「大きく息を吐いてください。頭と心が空っぽになっていくでしょう」 参加者は座禅を組み、目を閉じる。 女は無になろうと試みたが―― あっ、食後のアイスって買ってあったかな？ 「心を無にし…Read More »

「肩がギシギシ痛みますなぁ」 「油でも差して楽になりたいもんだ」 「歩くのもひと苦労。お互い老いには勝てませんな」 老人が老人を介護する老老介護―― ならぬ、ロボットがロボットを介護するロボロボ介護。 「所詮、我々は使い…Read More »

「近頃の副業ブームに乗って手を出してみたものの――」 男からは疲労の色がにじむ。 「なかなか大変だよ。本業に支障が出るほどさ」 「本末転倒だな」友人は言う。 「どんな副業なのか知らないけど、ほどほどにしておけよ」 守秘義…Read More »

「給料は上がらないし休みはないし…」 男は友人に愚痴をこぼす。 「これで美人の嫁でもいれば……」 男は思いついたように切り出した。 「そういえば俺、どこまでも息を吐き続けられるんだ」 「おっ、ギネス記録に挑戦か？」 男の…Read More »

「僕から電話する時は、吾輩って名乗るからね」 オレオレ詐欺の被害に遭わぬよう、祖母にそう伝えてあった。 祖母宅の電話が鳴る。 「あっ、オレオレ」 「貴志かい？　吾輩って名乗ると言ってなかったかい？」 電話の主はトラップに…Read More »

平和を信条とする平和党に、争いを好む戦争党。 笑いを大切にする笑顔党に、美しい女性で組成された美女党。 さまざまな党から候補者が立候補し選挙が行われた。 国の未来を占う選挙だけに、多くの人が投票所に訪れた。 ──しかし、…Read More »

「もうちょっとで生まれますからね！」 分娩台の上の妊婦を励ます。 新人の彼女にとって初めての出産サポート。 妊婦の踏ん張りで、ようやく赤ちゃんが姿を見せた。 助産師が抱き上げる。 それを見た彼女は悲鳴を上げた。 「へその…Read More »

「あら、ユメちゃん、駄菓子の空袋をためてるの？」 「うん！　それ全部、アタリなんだよ」 「どうしてためてるの？」 「ユメが死んだら天国に持って行くの」 「天国に？」 「だって、駄菓子屋のおばあちゃん、死んじゃったから」 …Read More »