作家として実体験しか作品にしない主義でねえ。 雑誌の取材を受ける巨匠作家。 「リアリティを追求されているわけですね」 「リアリティなんてもんじゃない、リアルだよ」 「ただ──先生の作品は、猟奇殺人を扱ったサスペンスが中心…Read More »

男の目の下のクマを見て、医師が尋ねる。 「不眠症ですか？」 「いいえ……寝言がひどくて」 「寝言に何か問題が？」 「隠し事まで口にしてるそうで……」 先日、妻から詰問された。 火遊びのことを。 「寝言を止める薬はないでし…Read More »

娘が手を洗いながらポツリと呟いた。 「蛇口からオレンジジュースが出てきたら嬉しいのになぁ」 子どもはいつだって想像力が豊かだ。 ほっこりさせられる。 それに比べて俺はどうだ。 「ねぇ、パパなら何が出てきて欲しい」 う～ん…Read More »

この顔は本物の俺じゃない。 変装して生きる。 正体は明かせない。 それが俺の宿命。 まさか、あんなことが起きるなんて―― 組織の指示が俺に下った。 変装して敵のアジトに侵入する。 その道中。 「付き合ってもらえませんか？…Read More »

ねぇ、パパ。雨が降ったら絶対に濡れちゃうもの、なぁ～んだ？ 娘がなぞなぞを出してきた。 「う～ん、なんだろう？」 答えは、傘だよ。 人は傘のおかげで濡れないけど、傘はいつだって濡れちゃう。 「傘だから仕方がないよ」 犠牲…Read More »

真っ赤な梅干しの中から生まれた赤鬼の子。 その名を梅太郎と名付けられた。 みるみる成長した梅太郎は、泣く子も黙る立派な鬼に。 島の鬼たちは、梅太郎に望みを託した。 恨みを晴らしてくれと。 「先代の仇ですね」 梅太郎はこん…Read More »

雪が降った。 家から飛び出すと、辺り一面、雪景色。 ボクは嬉しくなって、友達を呼びに行ったんだ。 雪とじゃれ合うように、ふたりで遊んだ。 雪に埋もれて遊んでいると、友達がいなくなっちゃった。 「おーい！」 どこに行ったん…Read More »

殺し屋の男はひと仕事終え、アジトに帰ってきた。 「珍しいじゃないか」仲間が声をかける。 男は洗面台の前に立ち、入念に手を洗う。 「予防だよ。妙な菌にやられないように」 「命知らずのお前が？」仲間は笑う。 手洗いを終えると…Read More »

なるほど、こことここが黒か。 で、上と下が、白。 さて、どう攻めるか。 なかなか手強そうだな。 眉間に皺を寄せ、じっと睨む。 漂う緊迫感に、相手の口もあんぐり。 ちょっと待てよ。 ここで、銀、という手もあるな。 ふふふ、…Read More »

強盗犯が人質をとり、雑居ビルの一室に立て篭もった。 周囲には報道陣が集まり、その様子が全国に報じられた。 犯人が一人で銃を構える映像が流れる。 「ん？　人質はどこにいるんだ？」 ニュースを見た視聴者が呟く。 そのビルは飛…Read More »