夢の空気入れ 「そうなんじゃ。この空気入れ機はのう、夢をパンパンに膨らませてくれる空気入れなんじゃよ」 辛子色のカーディガンを羽織り、白い顎ひげを蓄えた、小柄な自転車屋の店長は、来店した客の男に向かってそう言った。 「へえ。そうなんで…Read More » Posted on 2013年12月7日 by admin Categories: 妄想するショートショート
まるで永遠かのような時間 小さく揺れる、帰りの電車の中。 「なんだろうね、この感じ。今日のデート、すっごく長い時間に感じたなあ。時間を気にせずに、のんびり過ごせたからかなあ?」 隣でマキは、今にもこぼれ出しそうな笑みを、目元に浮かべ、見上げながら…Read More » Posted on 2013年12月1日 by admin Categories: 妄想するショートショート
ロボットのニーズ 「これで我が社の業績も右肩上がりになるだろう。ご苦労。よくやった」 M社は、企業向けテレフォンセールスの新戦略を打ち出した。それは高度にプログラミングされたロボットを使って、コールセンターからアウトバウンドによる販売を徹…Read More » Posted on 2013年11月23日 by admin Categories: 妄想するショートショート
何もかもがシェアされている 「せっかく担当さんに慣れてきた頃なのに、いきなり異動だなんてM社もひどいなあ」 入社二年目。私は小さなデザイン事務所に勤め、大手商社であるM社の営業担当を任されている。 上半期も終わり、業績不振からテコ入れを始めたM社は…Read More » Posted on 2013年11月17日 by admin Categories: 妄想するショートショート
核ヲ無効化セヨ 「山吹一尉、ついにM型殺戮兵器のプログラム開発が完了いたしました!」 おびただしい数のパソコンに囲まれた男は、小型の電話を握り締めながら、大声で叫んだ。 「うむ。よし、すぐに全世界に発表するぞ」 電話越しからは、重々しく…Read More » Posted on 2013年11月9日 by admin Categories: 妄想するショートショート
不都合な記憶 「仕事がアホみたいに忙しくって、一週間とか二週間とか、あっという間に過ぎて、全く記憶にさえも残ってないときとか、ない?」 「あるねー。歳くってきたのか、特に最近、多いわ、それ!」 鈴木は会社の同僚と、仕事終わり、駅の近く…Read More » Posted on 2013年11月2日 by admin Categories: 妄想するショートショート
未来観測アプリ 彼女がこんなにも泣き崩れているのを見るのは、初めてのことだ。 僕は彼女の肩を抱きかかえ、たまたま目にとまった、場末のバーに滑り込んだ。 「マスター、とりあえずビールを二つ」 駆けつけの一杯を飲みながら、彼女の涙のワケを聞…Read More » Posted on 2013年10月26日2013年10月26日 by admin Categories: 妄想するショートショート
スケ透け見えちゃうメガネ ついにその商品は、やってきた。 『スケ透け見えちゃうメガネ』 ヤマダは通信販売の郵送用ダンボールを衝動的に破ると、中からそのメガネを取り出した。 「これが、スケ透け見えちゃうメガネかあ」 あるマニアックなポルノ雑誌の表3…Read More » Posted on 2013年10月19日 by admin Categories: 妄想するショートショート
この町、最後の夜に 「美沙!いよいよ明日引っ越しやなあ」 「そうやで!まだまだやと思って余裕ぶってたけど、あっという間や。ほんま淋しいわ」 近所のファミレスでドリンクバーのコーヒーを飲みながら、どこまでも話は尽きない。 美沙は明日、この町を…Read More » Posted on 2013年10月13日 by admin Categories: 妄想するショートショート
天国へのパスポート まるで真空状態の中にいるかのような、その空間。その中には一本、揺るぎなく真っ直ぐに、上へ上へと伸びる階段がある。 男はその階段をゆっくりと昇っていく。なぜ昇っているのか、理由もわからず、時間の感覚も失ったまま、ただただ階…Read More » Posted on 2013年10月5日 by admin Categories: 妄想するショートショート