消えないタバコ そこは二人の行きつけの居酒屋。男と女はカウンターに腰掛け、深刻そうに話をしている。どうやら別れ話のようだ。 「もうこれ以上、あなたとは一緒にはいられない。私の気持ちがもう、あなたには向いてないから」 男は静かにじっと前を…Read More » Posted on 2014年4月5日 by admin Categories: 妄想するショートショート
鈍色の扉 田崎は中小企業に勤める、うだつの上がらないサラリーマン。本人は一生懸命頑張っているつもりだが、ミスも多く要領も悪く、上司から怒られ続ける毎日。同期入社の同僚たちは順調に出世街道をひた走り、万年平社員の田崎は、同僚たちの背…Read More » Posted on 2014年2月22日 by admin Categories: 妄想するショートショート
大掛かりな仕掛け その時、俺は玄関のドアをかすかに開いて、廊下の様子を伺った。 ――なんだ、やっぱり誰もいないじゃないか……―― 俺の部屋の隣は、空室になっているはずだ。もう長いこと借り手がついていない。 今日の昼間も誰もいなかったはずな…Read More » Posted on 2014年2月15日 by admin Categories: 妄想するショートショート
宝物のない毎日と、宝物を手にした毎日。 ここはオフィス街で、やたらと感情がないビルばっかりが立ち並ぶもんで。 その隙間から覗く夕焼けの色が、 沈み始めの憂鬱なオレンジと、 まだ不慣れな夜の群青とが相まった、 どうにも溶け入らない色合いが、ひどく汚ったねえもんで…Read More » Posted on 2014年2月11日 by admin Categories: 陰鬱の夕べ
笑劇竹取の物語 ほんの少し昔のある日、竹取の翁という者がいた。野山に入って竹を取っては、それをいろいろな事に使っていた。 その日も普段通り、野山に入って、せっせと竹を取っていると、少し先の方に根元が光る竹が一本あるのを見つけた。 はて、…Read More » Posted on 2014年2月8日 by admin Categories: 妄想するショートショート
そうして見下ろした世界は、一面、銀世界。 答えは、風に吹かれているみたい。 答えは、風に吹かれているみたい。 見慣れた街角も、くたびれたオフィス街も、 昨日の雨が作った水たまりも、しみったれた悲しみも、 どれもこれもが、僕の世界。 どれもこれもが、君の世界。 い…Read More » Posted on 2014年2月8日 by admin Categories: 陰鬱の夕べ
ある物語のはじまり むかしむかしのある晴れた日の午後、山のふもとの村で暮らす少年は、一面覆われた雪に自分の足跡をつけて遊んでいました。少し硬くなりはじめた粗目雪に身体の重みをのせてみると、ザクッザクッと小気味の良い音が鳴るので、まるで楽器で…Read More » Posted on 2014年2月1日 by admin Categories: 妄想するショートショート
パラレルな世界の住人 それはタケルが横断歩道を渡ろうとした時だった。ハンドルの制御を失い狂気を帯びた車が、スピンしながらタケルの身体に襲いかかってきた。激突の生々しい音が辺りに鳴り響いた後、道路の上には、突き飛ばされ横たわるタケルの身体と、二…Read More » Posted on 2014年1月26日 by admin Categories: 妄想するショートショート
情報化社会の崩壊 「これは悲惨なことになるぞ……」 ある研究所に勤務する老博士は、天井を見上げながらボソリと呟いた。 「そうですね……。これはある種の、情報化社会の崩壊を意味しますね……」 老博士の隣で立ちすくむ若い助手が、青ざめた表情で…Read More » Posted on 2014年1月18日 by admin Categories: 妄想するショートショート
十二の刻印 「もう十二時になる…。そろそろ帰らないといけないよ…」 ある国の王子様と、またある国のお姫様は、恋に落ち、清らかな思いで愛し合っていましたが、お互いの国の決め事により、夜の十二時になる前にそれぞれの国に帰らねばならないと…Read More » Posted on 2014年1月11日 by admin Categories: 妄想するショートショート