覚めない夢 「僕は、飛べる……」 自分に言い聞かせるように、そう小さく呟き、コンクリートの角を力強く蹴った。 見慣れた街並みが他人事のように小さく見え、経験したことのない解放感が身体を包む。 鳥になった気分だ。僕は今、空にいる。 空…Read More » Posted on 2014年6月15日 by admin Categories: 妄想するショートショート
同窓会 「ほら!卒業アルバム、持ってきたぜ!」 そう言って木村がテーブルの上に広げたのは、俺たちが小学生の頃の卒業アルバムだった。 濃紺の生地表紙に、希望という文字が箔押しされた、なかなか貫禄のあるアルバムだ。 卒業から三十年が…Read More » Posted on 2014年6月7日 by admin Categories: 妄想するショートショート
つきまとう影 『今日もあなたのこと、ずっと見てました』 そう書かれた不気味な手紙が手元に届いてから、もう二週間近くが経つ。 夜、いつもの場所に向かう俺は、手紙の差出人の視線がどこかにあるかも知れないと、普段よりも辺りを警戒しながら歩い…Read More » Posted on 2014年5月31日 by admin Categories: 妄想するショートショート
隣人の歯ぎしり 夜になると隣人の歯ぎしりが、ギシギシと響いてくる。不快で眠れないというほどのものではないが、みんなが寝静まった頃を見計らっているかのように、その歯ぎしりは毎夜聞こえてくる。悲しいほどに一定のリズムで、それは鳴る。 ――そ…Read More » Posted on 2014年5月25日 by admin Categories: 妄想するショートショート
出る、民宿 「他に何かご不明な点などございますでしょうか?」 年の頃は七十くらいだろうか、腰の曲がり方が少し陰気な印象を与える女将。皺が刻まれた手で部屋の鍵を手渡しながら、尋ねてきた。 「不明点というか、こんなこと聞くの、アレなんで…Read More » Posted on 2014年5月10日 by admin Categories: 妄想するショートショート
闇夜のサンプリング 人もまばらな最終電車を降り、人の気配もしない夜道を、ひとり歩いて家へと帰る。 ――なんだ、あの人影?―― 住宅街には明らかに場違いな黒服に身を包んだ人影が、三叉路の角にぼうっと浮かんだ。 「サンプリングしてますんで、よろ…Read More » Posted on 2014年5月5日 by admin Categories: 妄想するショートショート
ある洗面室で見かけた髪の毛についての考察。 人様の頭部から抜け落ちる頭髪、つまりは髪の毛が、ひらひらと舞い落ちる様を見かけたことが、一度たりともないように、夢に心臓をバクバクさせながら前へ前へと歩く人の姿を、この街で見かけたことがない。 だからまるで軍隊の行進のよ…Read More » Posted on 2014年5月4日 by admin Categories: 空論の中身は、枯れた考察と、センチメンタル。
新しい思い出の一日 「全部で4枚のDVDになりましたよ」 「ありがとうございます」 私は店員から紙袋を受け取り、温めるようにして胸に抱いた。 彼がこの世界からいなくなってから、もう10年。結婚から5年目のある日、彼は突然、この世から去ってし…Read More » Posted on 2014年4月27日2019年5月19日 by admin Categories: 妄想するショートショート
盗撮された写真 その時、目の前でフラッシュがたかれた。 少し酔ったサラリーマン風の中年男性は、カズキとアヤの座る座席の前に立ち、吊革に捕まるとすぐにスマートフォンを取り出し、まるで、うっかり誤動作させてしまったかのように装い、写真を撮影…Read More » Posted on 2014年4月19日 by admin Categories: 妄想するショートショート
リセット 君にこんな話をしても信じてもらえないかも知れないね。それくらいに嘘みたいな話だからね。でも、いいんだ。君にだけは、聞いて欲しいんだ。 ある一月も半ばに差し掛かった頃、僕は右手にロープ、左手に折りたたみ式の椅子を持って、自…Read More » Posted on 2014年4月12日 by admin Categories: 妄想するショートショート