「クラファンのリターン、何に設定しよっかなぁ」 芽衣はスマートフォンを見つめる。画面に表示された入力ボックスのカーソルが点滅を続ける。 「クラファンって、お金を支援してもらうやつでしょ？　支援してもらったお返しに、何かを…Read More »

「あまぁ～いよ。とにかく、あまい。鍛冶谷瞬似のイケメンだったの。もう、最初っから最後まで至福の時間だったなぁ～」 人気俳優の名前を挙げながら、脳内にリアルな映像を思い浮かべたミクが表情をとろけさせる。 「そんなの恋活にも…Read More »

「なるほど。ラブレターを書くのに字が汚いとマズい。それで書を始められたのですね」 はい。お恥ずかしい話ですが。 「書道家になられた今、既にラブレターはお渡しに？」 いえ。 書道家はこめかみを掻いた。 今の時代、デジタルの…Read More »

御社の企業理念に惹かれて応募しました。 「企業理念？　どう惹かれたの？」 わかんないっす。 「ウチの業種、知ってる？」 知らないっす。 「政府の要人の命を狙う仕事だよ。それを知った上でここに来たの？」 知らないっす。 「…Read More »

「金は用意した。今日こそ人質と交換だ」 正義のヒーローがにじり寄る。 「ダメだ。先に金を渡してもらおう」 悪党がそれを拒む。 「いや、人質の解放が先だ」 「いや、金だ」 「人質だ！」 難航する交渉。 時間だけが過ぎて行く…Read More »

「火を放っちまおうぜ！」 「ダメです。そんなことをしてはなりません」 「黙れ！　口出しするな！」 制止する天使をよそに、悪魔は火を放った。 あたり一面が火の海と化す。 タカシは眠気を追い払い、再びペンを動かした。 「いい…Read More »

「そんな貧相な調色で、深い色味が表現できるか、このアホタレが」 見もしないくせに、どんな調色をしてるのか、なんで分かるんだ。男は目の前に鎮座する老いた背中を睨みつけた。 「これからはデジタルの時代ですよ。僕たちみたいな手…Read More »

それは、アオイからの挑戦状だった。 「今日も帰って動画撮影するっしょ？」 「あっ、いや──今日は、やめとくわ」 いつも通りの放課後を提案してくる友人の誘いを振り切る。 「まさかお前、隠れてバレンタインのチョコでももらいに…Read More »

怪しいと思っていた。彼の行動、言動、予定。辻褄の合わないことが多かった。そして、ワタシの予感は的中した。 彼は、既婚者だった。 ＳＮＳのアカウントを片っ端から調べ上げた。すると、彼が奥さんと楽しそうに休日を過ごす様子が映…Read More »

インターフォンが鳴った。 惰眠を妨げられた徳田は舌打ちをした。枕代わりにしたクッションの形を整え、眠りを取り戻そうと再び目を閉じたとき、二度目のインターフォン。徳田は無視を諦め、しぶしぶ玄関へと向かう。目を細め、覗き穴か…Read More »