天国と地獄の境界線。 門番が男に尋ねる。 「今までに殺したことは？」 ないです。男は答えた。 「蚊、すらも？」 男はうなだれた。 門番に促され、男は地獄へと歩を進めた。 門番が蚊に尋ねた。 「これまでに奪ったことは？」 …Read More »

男はスクリーンに視線を注ぐ。 登場人物は懐かしい顔ぶれ。 あんな奴もいたなぁ。 疎遠になった奴も。 命を絶って今じゃ会えない奴もいる。 兄貴とも疎遠に。 カミさんには迷惑ばっかりかけたなぁ。 やがてエンドロールが流れる。…Read More »

サンタクロースが街に降り立った。 ん？　煙突は？ トナカイは言う。 最近の日本の家には、煙突がないんですよ。 サンタクロースはしばらく考え込んだ。 よし！ 玄関の前に立ち、ポーチから工具を取り出す。 鍵穴に差し込むと、ガ…Read More »

カナコは泣き腫らした目を真っ赤にした。涙が止まらず、何度も目をこする。その目はさらに真っ赤になった。 隣でふざけていたカンタは、その様子を見てコトの重大さに気づいたのか、ばつの悪い表情で突っ立っている。 「知らねえし」 …Read More »

朝目覚めると、姿形が母と入れ替わっていた。 最悪ッ！ 母と話し合い、元に戻るまでお互いの生活を営んでみることにした。 掃除。 洗濯。 買い物。 近所付き合い。 洗濯物の取り込み。 犬の散歩。 お風呂掃除。 料理。 後片付…Read More »

博士はある情報を聞きつけ発狂した。 地球には、人間と同じ姿形をした精巧なロボットが忍び込んでいる、と。 大急ぎで開発したのは、ロボットを見分けるゴーグル。 視界が暗視カメラのようになり、ロボットを捉えると光る仕組み。 試…Read More »

豊かになった人類。 その反動で溢れるゴミ。 地球でゴミを抱えきれなくなった人類は、それを宇宙へと廃棄した。 やがて人類は宇宙の法に裁かれることに。 我々は宇宙へと飛び立ち、浮遊するゴミをペンキで金色に塗りつぶした。 後世…Read More »

ウチのお化け屋敷はリアルさが売りだからさぁ。 テーマパークのオーナーが言う。 お化け屋敷でお客さんを驚かせるのが憧れなんです。 面接に来た女が目を潤ませる。 そんなに働きたいの？ はい！ ウチには人間のスタッフは要らない…Read More »

地面に突き立てた棒がしなる。 豪快に浮き上がった身体をひねる。 予想よりもかなり高く飛んでいる。 練習の成果を確信した。 越えねばならないバーは、はるか下。 完璧な跳躍だった。 笑みを浮かべ空を仰ぐ。 身体は落下し、マッ…Read More »

「美咲さん？　もしかしてあなた、タケ君にこんな薄い味噌汁飲ませてるの？」 そのひと言から私と姑の戦争ははじまった。 私と夫のタケルは健康に気を使い、料理の味付けを薄味にしようと決めた。それなのに姑は、私が作り置きしている…Read More »