少女は屋上の縁に立った。 眼下にはグラウンドが待つ。 さよなら── その時、背後に奇妙な乗り物が現れた。 「乗りな」 男の声が促す。 タイムマシーンに乗り込み、少女は大人になった自分を目にした。 「大人は好きなときに好き…Read More »

俺はクローゼットの中に飛び込んだ。 女の亭主が帰宅したからだ。 開けられたらどうしよう。 心拍数が上がる。 耳を澄まして様子を伺う。 すると、２発の銃声が轟いた。 「出ておいで」 聞き慣れた女の声。 恐る恐る、扉を開く。…Read More »

向こうから歩いてくる男を避けようと右へ寄る。 すると向こうも右へ。 左へ身をかわすと、今度は向こうも左へ。 押しつ押されつの攻防が続く。 気づけば日暮れ。 牛歩の如く歩を進め、彼女と同棲中の家に帰った。 彼女は目を丸くす…Read More »

僕の手に、そっと先生の手が添えられた。絵筆を持つ僕の手は微かに震え、それを包むように制する先生の優しさを感じる。ゴクリと唾を飲み込み、緊張を抑える。徐々に大きく弾む感情。汗ばんだ手。心の乱れが絵に影響しないよう、慎重に空…Read More »

願いをかける星を彼は待ち続けた。 自らの幸せ。 大切な人の幸せ。 まだ見ぬ遠い国の人たちの幸せを願うために。 彼は何年も流れ星を待ち続けた。 ある日、彼は目を閉じこう願った。 流れ星よ駆けてくれ！ 空を駆けるひと筋の流れ…Read More »

「日当５万円!?」 「そうなんだよ。しかも、勤務時間はたったの30分くらいなんだよねぇ」 自慢気に語る友人の田中。どうやら先月から高給がもらえる深夜バイトを始めたらしい。噂を聞きつけた俺は田中を呼び出し、根掘り葉掘り聞き…Read More »

12月31日。 地球に異変が起こった。 日没以降、陽が登らない。 年が越せない。 新しい年が迎えられないことに、落胆する人々。 人類は全員で力を合わせ、太陽を引っ張り出した。 そして無事、新年を迎えることができた。 あれ…Read More »

ポツリポツリと雨が降ってきた。 男は空を見上げ呟く。 「また、誰かが泣いてるのか」 そっと傘をさす。 また別の日。 ポツリポツリと赤い雨が降ってきた。 男は空を見上げ呟く。 「また、戦争が始まったのか」 そっと傘をさす。…Read More »

要らないものは断捨離。 身軽にならなきゃね。 後生大事に持っていても仕方がない。 目につくものすべて。 思い切って捨ててしまおう。 ガランとした部屋にひとり。 女はひと息つくと「さぁ」と呟き、立ち上がった。 最後に捨てる…Read More »

ほら、そこに浮かんでるだろ。 それをそっと掴んでごらん。 天使は囁いた。 あっ！ ダメだよ！ そんなに強く握っちゃ。 手のひらのそれは、粉々に砕け散った。 いいかい？ 誰にも奪われないように、素早く掴むんだよ。 逃さない…Read More »