キョロキョロと地面を見回す不審な男。 何かを探しているようだ。 「何かお探しで？」 「ちょっと落とし物を」 「よければ、一緒に探しましょうか？」 男は頷いた。 「いつ頃、落としたの？」 「先週末の夜中に、ここで」 先週末…Read More »

また詰まらせたってのか!? 救急隊員は休む間もない正月を憂いた。 救急車に乗り込み、現場へと向かう。 部屋の中には、苦しそうな男子と慌てふためく女子の姿。 症状は？ 何か言葉を喉に詰まらせたみたいで……。 救急隊員は男子…Read More »

「早く行けって言ってるだろ。たったの一時間だけだからな」 アズミは僕の尻を平手打ちした。勢いに押され、思わずよろめく。 「でも──」 「でもじゃないだろ。言い残した言葉があるんだろ？　ちゃんと伝えてきなよ！」 「わかった…Read More »

博士！　人間から執着心を奪えば、戦争は終わるはずです！ 研究員は息巻いた。 金や権力に執着することもなくなる。 ふむ。なかなか面白い仮説だね。 優しく微笑む博士。 でもね。 博士は胸に手を当てた。 生きることへの執着心を…Read More »

小学校の男女混合リレー。 僕はアンカーで、僕にバトンを渡すのが、当時僕の好きだった女子。 僕はバトンを受け取らず、彼女の手を握って走ってしまった。 とにかく夢中で。 そのまま二人でゴール。 ルール違反でリレーには負けたよ…Read More »

少女は足元に伸びる影を怖がった。 あの道を通る時はいつも、影から逃げるように小走り。 ただの影だから大丈夫。 大人たちはなだめた。 数日後、少女は誘拐された。 あの道で姿を消したらしい。 捜索は何年も続いたが、未だ見つか…Read More »

そこは盛大な葬儀場。 祭壇の遺影の中、老いた俺が笑う。 鼻をすする音。 涙を誘う弔辞。 タイムリープして、俺は偶然ここに来た。 思わず背筋が伸びる。 俺の死に様。 悪くない。 こんな最高の終幕が待っているのか。 現代に戻…Read More »

初夢はいい夢が見られるだろうか。 一富士二鷹三茄子。 縁起のいい夢がいいなぁ。 思いを馳せていると、玄関から騒がしい足音。 「先生！　原稿の締切が急遽、明日の朝になりました！」 担当の編集者だ。 「徹夜ってこと？」 「も…Read More »

無事に鬼を退治できましたとさ。 めでたしめでたし。 お、わ、り。 月明かりが差し込むベッド。 心地いい寝息のリズム。 疲れて寝ちゃったかな。 読み聞かせしてあげると、すぐに眠れるんだね。 毎日、読み聞かせしてあげる。 ひ…Read More »

弟子はとらない。 頑固一徹の職人。 そんな職人がついに、技術を継承する弟子を迎え入れたと話題になった。 「爺さん、いったいどんな弟子なんだい？」 「従順な奴だよ」 職人は笑った。 「まさか弟子をとるとはねぇ」 職人が呼ぶ…Read More »