軒下で雨宿り。 雨ってイヤだよねぇ。 私は言う。 そうだね。 彼は言う。 雨が降って嬉しいことって、何かあるかなぁ。 私は尋ねる。 そうだなぁ。雨にはあって晴れにはないもの？ 空を眺める彼。 彼は持っていた傘を広げ、私を…Read More »

あの女だ。 ミステリー雑誌の編集者は女の後を追った。 美しい女性。 噂によると女は豹変する。 口裂け女へと。 女は振り返り、「私、キレイ？」と尋ねてきた。 興奮する男。 しかし、女は一向にマスクを外さない。 我慢できず男…Read More »

新作のホラー映画に出演してる幽霊役の人、演技うまいねぇ。 確かに、あの役者さんあっての映画だよ。 でもさぁ、あの役者さんって、数年前に亡くならなかったっけ？ そうだよ、不慮の事故で亡くなったんだよ。 だよねぇ。 そうだよ…Read More »

彼はガレージの砂利の上で土下座し、泣き叫んだ。小石が突き刺さる膝頭には、痛みも走っているだろう。それでも彼は気にせず叫んだ。 「美桜！　捨てないで！　俺と別れないで！　お願いです、お願いです、お願いです！」 職場の先輩か…Read More »

限界集落にひとり住むお婆さん。 もう先も長くない。 死ぬ前に誰かと楽しくおしゃべりしたい。 人生最後の楽しみにと、電話番号を貼り付けた風船を、山の上から飛ばしみてた。 風船は風に揺られて飛んで行った。 数日後、お婆さんの…Read More »

幼い頃、男は町外れの記念碑に落書きした。 少年に罪の意識などなかった。 年月が経ち、すっかり大人に。 ふと思い出し、記念碑を管理する施設に電話した。 「お詫びに記念碑を建て直したいのですが」 担当者は言った。 「それは困…Read More »

ある職人の元へ、男は弟子入りした。 とても厳格な師匠。 技は見て盗めという教え。 難題はここからだ。 師曰く、技は目を閉じて感じるものだと言う。 何も学べぬまま20年の月日が流れ、師は老衰でこの世を去った。 男は転職を余…Read More »

時に背後霊には整理券が配布される。 取り憑きたい人気の人間は順番待ちになる。 まるで流行りの飲食店のよう。 背後に長蛇の列ができる。 ある日、画期的なシステムが導入された。 取り憑ける日が来ると通知が来るアプリ。 これで…Read More »

予想もしないところで炎があがった。 火の燃える勢いは凄まじく、あちこちに燃え移った。 悲鳴をあげる者。 怒鳴り散らす者。 野次馬もたくさん集まり、騒ぎ立てた。 もはやどこが出火元かすらわからない。 消防隊員が到着する。 …Read More »

「今の恋人と絶対に別れちゃダメ！」 突如姿を現した女が叫ぶ。 「私は未来のあなた。未来から忠告に来たの」 「そんなわけない──」 美咲は首を横に振った。 女は目を丸くする。 「未来の私がこんなに太ってるはずがない！」 聞…Read More »