折り畳み椅子に腰をおろし、老いた画家が満開の桜をスケッチしている。 今年は邪魔がおらんから筆が進むわ、と呟いた。 静かな公園で優雅に写生を続ける。 仕上がった絵を見て、画家は首をひねった。 「花見客がおらんと、やっぱり絵…Read More »

ある有名人のもとに男が駆け寄った。 男はペンと紙を差し出し、必死にサインをねだる。 「サインは断ってるんだよねぇ」 苦笑いして突っぱねるも、男に諦める気配はない。 「だからサインはできないって」 それでも男は引き下がらず…Read More »

なんで俺の顔は、こんなにもブサイクなんだ。 女子にもモテない。 親不孝とは知りつつも、両親に言ってしまった。 「こんな顔に産みやがって。お前らのせいだ！」 父と母が申し訳なさそうに俯く。 「ごめん。言い過ぎたよ」 「いや…Read More »

予知能力が評価され、男は大統領の安全を守るＳＰを任された。 「西の方角にスナイパーがひとり」 大統領は頷く。 「東のビルの上と北の商業施設の屋上にもスナイパーが」 男の的確な指示は大統領を安心させた。 「あそこにもあそこ…Read More »

「その表情、いいね！」 軽快なシャッター音が響き渡る。 「もっとスマイルちょうだい！」 満足げな表情でカメラマンが叫ぶ。 「ＯＫ！」 印刷した写真を手渡す。 「じゃあ、面接がんばってね！」 彼は履歴書用の写真を撮る証明写…Read More »

教師から答案用紙が返された。 「クソッ！ また歴史が赤点かよ」 生徒はボヤいた。 歴史は秒単位で変化するようになり、今年度をもって科目から外されることに。 それもそのはず。 タイムマシンが実用化され、誰もがタイムリープで…Read More »

スタブロに足をセットし、両手を地面につけながら全神経を集中する。かがんだ姿勢のまま視線を少し上げると、はるか遠くにゴールラインが見えた。たった１００メートル先とは、とても思えないほどに果てしない。 この世界からすべての音…Read More »

「スマホ見せてッ！」 嫉妬深い彼女が、俺の浮気を確かめたがる。 拒むのも面倒になり、スマホを手渡した。 入念にチェックする彼女。 「何もないだろ？」 彼女の表情が和らいだ。 次の日、彼女は行方をくらませ、俺の銀行口座の残…Read More »

３人の少年たちは、ふざけながら下校していた。 向こうにクラスメイトの姿が。 「おい！　お前ってほんと影が薄いよなぁ！」 少年たちは叫びながら彼に駆け寄った。 よく見ると、彼の足元に伸びる影が異常に薄かった。 彼はニヤリと…Read More »

霞む視界の中。目の前には川が流れている。 よく見ると川の向こうに、死んだ父、母、じいちゃん、ばあちゃんの姿。 こっちにおいでと、笑顔で手招く。 俺は家族が嫌いだった。 だから若くして家を出た。 あっちには行きたくない。 …Read More »