世間の人たちは僕のことを気味悪がった。 明けても暮れてもＶＲ《仮想現実》のヘッドセットを身につけているからだ。 肌身離さず、朝から晩までずっと。 「そこに何が映ってるんだい？」 興味を持った知人にヘッドセットを覗かせた。…Read More »

「そろそろ入れる時間だな」 男は神社に足を踏み入れた。 少し先にはスラッとした女性の姿。 「この時間ですか？」男は小走りで尋ねる。 「はい」照れた女が答える。 「もしよければ、ご一緒しても？」 「ぜひ」 ここは縁結び神社…Read More »

こんなことなら発明されなきゃよかったのに。 世界中の人々が口を合わせてこぼす。 「もう行くところがないよ」 「私もすっかり飽きちゃった」 みんなが心から待ち望んだ瞬間移動の技術。 世界各地へ瞬時に移動できると人々は喜んだ…Read More »

藤堂明香は苛立っていた。男の趣味が絶対に合わないと思っていたから佳代に声をかけたのに、「雅春くんの一択だわ」なんて言いやがる。男の取り合いをするために、この合コンを開いたわけじゃない。それなのに──。 「そろそろ席替えし…Read More »

旧友と久々に再会し、話に花が咲く。 「へぇ。ＩＴ関係に勤めてるんだ。またどうして？」 「学生の頃にパソコン技術をかじったことがあったから、その流れで」 男は友人の活躍を羨ましがった。 「ところでお前は？」 素朴に尋ねる友…Read More »

俺はある男と共謀し、豪邸から大金を盗んだ。 バッグの中には札束がギッシリ詰まっている。 「バッグの中身を空っぽにしてやろうか」 男の職業はマジシャン。 奴はふざけてマジックを披露した。 一瞬にして軽くなるバッグ。 「よせ…Read More »

小学生の頃はクラスの人気者だったのに。 学生の頃はあんなにもモテたのに。 新入社員の頃は営業成績もトップだったのに。 そこは後ろを振り向いてはならぬ橋。 男は走馬灯に惑わされ、振り返ってしまった。 すると金棒を手にした鬼…Read More »

年老いた老婆は顔を指差し言った。 「人生で歩んできた道のりが、シワとして顔に刻まれるんじゃ」 婦人は頷いた。 「悩んで迷って遠回りした人生。見ての通り、シワまみれよ」老婆は笑う。 「それはそうとアンタ、肌がプリプリじゃの…Read More »

日曜日の昼下がり。 街中が黄色いシャツの人たちで溢れかえっている。 ひとり紺色の服を着た私は、異様に目立っていた。 「テレビ見なかったの？」 通行人から声をかけられた。 朝の情報番組の星座占い。 その日は奇跡的なことが起…Read More »

山の中腹にひっそりと佇む神社。 男は祈願に訪れた。 木箱に手を突っ込み、おみくじを取り出す。 すると、それは白紙の紙切れだった。 それを見た神主は言った。 「人生の吉凶は自分で決めるもんじゃ」 「自分で書き込めと？」 「…Read More »