孤独を背負う男の元に神が降臨した。 「願いを叶えてやろう」 男の人生で手にできなかったもの、それは――。 「――友達が欲しいです」 神は頷くと、キッチンへ向かった。 冷蔵庫を開け、取り出したのは冷えた缶ビール２本。 プシ…Read More »

執刀医はメスを握る手を止め、ボソッと呟いた。 「この患者はきっと嘘つきなんだろうな」 助手の女は隣でポカンとしている。 「見てごらん」 執刀医は大きく開かれた患者の腹部を指差す。 覗き込んだ助手は悲鳴をあげた。 そこには…Read More »

タレントの不祥事が相次ぎ、ＣＭやドラマの打ち切りが続く。 リスクを鑑みたスポンサーたちは、バーチャルタレントを起用し始めた。 テレビに人間が出演する機会も激減。 今日もバーチャルタレントが番組を盛り上げる。 「はははッ！…Read More »

少し早い梅雨が訪れ、傘が手放せなくなったある日のこと。変わらない日常が始まり、会社までの道のりを歩く。無数の傘の中から、人の波に逆らって歩いてくるひとつの傘を見つけた。その傘は男のそばまで来ると急に立ち止まり、手にした赤…Read More »

吊り橋に来れば彼女との仲が深まると、壮大な勘違いをし、今現在、田中美月さんと吊り橋の上に立っている。高所恐怖症の僕は美月さんの服の袖を掴んだまま、足を震わせている。風で揺れる吊り橋。自分の足の振動で、不規則に揺れる吊り橋…Read More »

地球温暖化により海面は上昇。 多くの町や村が海に飲み込まれて行った。 あれから長い年月が過ぎた。 名乗りをあげたのはひとりの学者。 海面を元の位置に戻すと言う。 実験は見事に成功。 歓喜する人々の背後で声がした。 「今日…Read More »

「隣、いいですか？」女は言った。 「どうぞ！　新人さんですね」 男は安堵の表情を浮かべる。 「『白鳥には見えないぞ』って苦情が最近多くて」 「私はどうすれば？」 「そこで輝いていてください！」 デネブの隣で新しい星が輝く…Read More »

俺はインディーズに拘りたいんだ。 地下のライブハウスを愛する彼は、メジャーデビューを拒んだ。 彼にはもっと広い世界で活躍して欲しい。 恋人の私が言うならと、彼はインディーズの世界を捨て、メジャーデビューを果たした。 彼の…Read More »

後ろ姿しか見えないのに、なぜか誘惑される。 君だけが特別。他とはまるで違って見えるんだよ。 試しに指で触れてみる。 やはり君しかいない。 君のハートが欲しいんだ。 男は引き抜きを決めた。 さぁ、君の顔を見せておくれ。 男…Read More »

警官から職務質問を受け、焦った男は逃げ出した。 背後から全力で追ってくる警官。 後ろを振り返った瞬間、男はあることを思い出した。 警官も何かを思い出したようだ。 高校の陸上インターハイ。リレー決勝の記憶が蘇る。 男は後ろ…Read More »