国家の新たな方針により、反逆思想を持つ者は徹底的に取り締まることに。 男は人間不信に陥った。 会う人すべてがスパイだ。 何気ない会話や問いかけも、誘導されている気がした。 休日に妻とショッピングへ。 妻は男に尋ねた。 「…Read More »

いつかキミは僕に、「星がひとつも見当たらない、真っ暗闇の空を知ってるかい？」と尋ねてきた。知らない――と僕が答えると、キミは残念そうに目を伏せた。僕はいまでもこうして空を見上げながら待っている。あの日、キミと見た空がやっ…Read More »

「新人のくせに直帰だと？」「もう帰ってこないだと？」「今日が初日のくせに！」 仕方ないのです。何事もこれから経験です。 「どこへ行くんだ？」 それは自分にもわからないのですよ。 「ふん、適当なヤツだな！　最初の仕事は？」…Read More »

「先生の死因は極度の拒食症か……」 編集長と担当編集者は作家の死を悼んだ。 「締切のストレスだろうか？」 「そうじゃないらしいです」 彼の才能は人間離れした想像力。 食べ物を目にするだけで、味や食感が想像できるようになっ…Read More »

「荷物が重くて、これ以上背負えないのです」 若い旅人は苦笑いする。 もう得られるものはない。これが旅の終わりだ。 それを聞いた老人が口を開く。 「何かを捨てれば、君はまだまだ荷物を背負えるよ」 「すべて大切なものばかり━…Read More »

「まだ諦めるな！　夏が終わっちゃうよ！」 ハーフパンツにＴシャツの僕。 その手は小刻みに震えている。 それを見守る浴衣姿のキミ。 湿気でとまらない汗。 僕の声に反応するように火花が散る。 火玉は落ちることなく、どこまでも…Read More »

ある有名作家の邸宅に、強盗が押し入った。 「１億円を用意しろ！　もしくは――」 「もしくは？」 「お前の才能を俺によこせ」 作家はその才能を手放すことにした。 「命拾いしたよ」作家は呟く。 その影から男の声がした。 「も…Read More »

初夏のある日、少年は大きなアクビをした。 大きく開けた口の中に、スポッ、何かが侵入した。 慌てて咳き込む少年。 「アーアーアー」 少年はどこか違和感を覚えた。 「アーアーアー」 「あれ？　声が低くなってる……」 少年の喉…Read More »

「今日の課外授業はゴミ拾いだってさぁ」 生徒たちは渋々、学校をあとにした。 「うまくゴミを燃やす計画もあるらしいぜ」 「どうせ、燃えない場所にゴミを出す奴もいるよ」 ロケットに乗り込み宇宙へ。 大気圏で燃えずに残った宇宙…Read More »

「脇に体温計をはさんでくださいね」 幼い子供は素直に医師の指示に従った。 安静にするため居間で絵本を読む子供。 なぜだか体が急に熱くなり、涙が溢れ出した。 これが感動というものか。 火照った体。思わず脇に体温計をはさんだ…Read More »