空に舞い戻る雪 窓の外に広がっていたのは、それはあまりにも異様な光景で、僕は思わず外へと飛び出した。空から降るはずの雪が、あろうことか、地上から空へと舞い戻っている。一面の銀世界が空に吸い込まれていく。 まだ子供だった僕は、眼前の奇妙…Read More » Posted on 2024年2月25日2024年2月25日 by admin Categories: 妄想するショートショート
緊張ブレイキングダウン 全身に浴びせられる拍手と温かい声援。それはどんどんと大きくなり、僕を包み込む。 まだダメだ。まだダメだ。目を開けるな。落ち着け、落ち着け! 固く目を閉じたまま深々と一礼をする。それに呼応するように膨れ上がる声援。意を決…Read More » Posted on 2024年2月12日2024年2月12日 by admin Categories: 妄想するショートショート
ポケットの中の魔物 「あれ?」 コンビニのレジで金を払おうとした男は、ズボンのポケットの中をまさぐった。「ちょ、ちょっと待ってくださいね」 たしかポケットに小銭を入れていたはずなのに。それでタバコを買おうとコンビニに来たはずなのに。いくらポ…Read More » Posted on 2024年1月28日2024年1月28日 by admin Categories: 妄想するショートショート
タイムマシンが向かう先には 「ママ、ママ、見て!」 先を歩く母親の袖を引っ張り、幼い子どもが声を張り上げる。ひっそりと静まり返った博物館に、その声は響き渡った。「タクちゃん、どうしたの?」「ママ、あれ見てよ!」「どれどれ――」 長めの白衣に身を包…Read More » Posted on 2024年1月14日2024年1月14日 by admin Categories: 妄想するショートショート
若い夫婦 「ねぇ、あなた、今日は仕事、遅くならない?」「そうだなぁ。できるだけ早く帰るよ」「寄り道はダメよ」「わかってるよ。まっすぐ、君のもとへ帰ってくるから」「行ってらっしゃい」「行ってきます」 背後に飛び交う瑞々(みずみず)し…Read More » Posted on 2023年12月24日 by admin Categories: 妄想するショートショート
やぁ、久しぶり 男は来る日も来る日も太陽の光を浴び、月の光を浴び続けた。ある実用書を読んだことがきっかけではじめた日光浴と月光浴。ひたすら念じながら、一身に光を浴びる。来月に待つイベントに向けて、男は愚直にそれを続けた。 店へと向か…Read More » Posted on 2023年12月10日2023年12月10日 by admin Categories: 妄想するショートショート
穴 ――今月の営業成績も最下位。このままじゃ窓際に追いやられてしまう……。憂さ晴らしのパチコンで金はスッちまったし、給料日までどうやって食いつなごうかなぁ。 頼みの綱だった得意先とのアポイント。まさかの当日キャンセルを告げら…Read More » Posted on 2023年11月26日2023年11月26日 by admin Categories: 妄想するショートショート
化ける――ある小説家の手記 もはや我慢の限界がきたのだろう。これまで編集者の言葉を拠り所とし、脇目も振らず一心不乱に作品を紡いできた。「いつか化ける、先生は必ずいつか大物に化けるから」と持て囃(はや)され、もう何十年が経つ?「俺の人生を返してくれ…Read More » Posted on 2023年11月12日 by admin Categories: 妄想するショートショート
ある月夜の惨劇 それは、朧気(おぼろげ)な光沢を纏(まと)った美しい月が煌(きら)めく、とある夜のことだった。女王は寝室の窓から月を見上げたかと思うと、狂的に声を張り上げ、執事を部屋に呼び出した。「この世で一番、美しいものは?」「もち…Read More » Posted on 2023年10月29日2023年10月29日 by admin Categories: 妄想するショートショート
悪魔を退治したあとに 今日で僕は転校する。せっかく住み慣れたこの町とも、もうお別れだ。ホームルームが終わり、クラスメイトに別れを告げる。いつもと変わらない放課後の校舎。下校で賑わう校庭を抜け、校門をくぐろうとしたとき、聞き慣れた声が僕を呼び…Read More » Posted on 2023年10月15日2023年10月15日 by admin Categories: 未分類