「ねぇ。あなた、隠しごとしてるでしょ？」 　休日の何気ない昼下がり。ひとときの休息を打ち破るように、妻は唐突に突きつけてきた。 　まさかこいつ、知ってるのか？ 「ごめんね……見ちゃったんだ」 　そう言いながら、申し訳なさ…Read More »

前から歩いてきた与太者と肩がぶつかった。 「やい！　どこ見て歩いてやがるんだ！」 ヤツは因縁をつけてきた。 市場からの帰り道。 妻から頼まれた買い出し。 急いで帰らなければ。 「肩がイカれちまったぜ。治療費を払えよ」 厄…Read More »

世の中は犯罪で溢れ返っている。 恐怖に駆られた男は、自宅に閉じこもった。 外に出なければ犯罪に巻き込まれることもない。 安全に生きていける。 電気もつけずひっそり、誰にも会わずに過ごす日々。 そんな男が久々に人と対面する…Read More »

「しょうがないなぁ」 幼い男の子はボヤいた。 「赤色さん欠席かぁ……」 男の子は辺りを見回した。 「今日だけは特別だよ」 手招きする男の子。 嬉しそうにペコペコしながら、男の子のもとへ駆け寄ったのは、悪魔。 「虹の赤色担…Read More »

クソッ！ 男は恐怖を感じ、走り出した。 何かから逃げるように。 常にまとわりつく誰かの気配に苦悩し、男は医師に相談した。 「君の思い込みだよ」 そう言われても納得できない。 確かに尾けられている。 医師に勧められて訪れた…Read More »

死んだ人にも自由に会える魔法。 そんな魔法があったらいいのになぁ。 おばあちゃん、おじいちゃん。 いつも笑顔のママ、頼もしいパパ、そして大好きな妹のマコ。 いつだってみんなに会えるのに。 少年は杖を振る仕草をする。 「え…Read More »

＜よかったら拾ってあげてください＞ 「かわいそうに雨に濡れて……捨てられたんだね」 ただ、どうしようもないと男は目を閉じた。 我が家にはそんな余裕もないし。 男はそっと傘を差し出した。 雨に濡れないように――男にできる最…Read More »

女はある食堂に足を踏み入れた。 「ウチはメニューがひとつしかなくてねぇ」 店を出るわけにもいかず、女は席についた。 「ちょっとよろしいかな？」 目を閉じるよう促すと、店主は女の額に手をかざした。 何かを読み取っているよう…Read More »

「彼のことを許してあげましょう！」 脳内で真っ白な天使が微笑む。 「どうせヤツはまた浮気するぞ。別れてしまえ！」 真っ黒な悪魔が叫ぶ。 白か黒か迷っているその時だった。 「まぁ、様子を見よう」 「そんなに深く考えないで」…Read More »

朝は少しの気配で目が覚める。 いつでも神経が研ぎ済んでいるからだ。 愛用の銃を手に取り、艶が出るまで磨く。 そして架空の人物を想像し銃口を向ける。 銃弾は脳天を直撃。 「今日も調子がいいな」 呟くと俺は、冷蔵庫から取り出…Read More »