男は空き地を見て思う。 「あれ？　ここって何の建物だったっけ？」 通い慣れた道。 見慣れた景色のはずなのに── いざ建物がなくなると、それまで何が建っていたのか忘れてしまう。 男は仕事から帰り、ソファに腰掛ける。 「そう…Read More »

ロボットが持ち主を刺殺する事件が起こった。 その家にロボットがやってきたのは２年前。 持ち主が購入したのは、人工知能と感情学習を備えたハイスペックなタイプ。 一緒に暮らすことで、どんどんカスタマイズされる。 犯行の理由は…Read More »

あなたの全ては筒抜けです。 盗聴？　そんな生やさしいもんじゃない。 地図を使えばあなたの自宅が。 写真を撮ればあなたの顔が。 ＳＮＳを使えばあなたの人間性や交友関係が。 そう。 スマートフォンを通じて全てが抜き取られてい…Read More »

チラッと振り向くと、後ろからどんどん迫ってくる。 その勢いは凄まじい。 前に向き直り、死に物狂いで逃げた。 それでも迫る背後の気配。 「クソっ！」 あれだけ逃げたのに。 逃げても逃げても追ってくる。 再び後ろを振り返ると…Read More »

もう疲れた。終点で起こしてもらおう。 男は電車に乗り込み、座席に座るや否や居眠りをはじめた。 電車は走る。 ゴトンゴトン。 どこまでも走る。 ゴトンゴトン。 その線路の先には終点など存在しない。 どうやら確認しなかったよ…Read More »

あまりにも強い衝撃。 頭でも打ったのか記憶がない。 足を棒にして歩き回ってみたが、どこを探しても人が見当たらない。 男は確信した。 「ここは巨大な無人島だ……」 記憶がないので理由はわからない。 ただ、自分は無人島で生き…Read More »

インターフォンが鳴る。 モニタには警官の姿。 昼下がりの主婦は玄関のドアを開けた。 「警官を騙った住居侵入事件が、この辺で多発していますので注意してください」 夜のニュースで目にしたのは昼間の警官。 住居侵入罪で逮捕され…Read More »

　そこは古ぼけた駅長室。小ぶりな石油ストーブが一台。必死に熱を振りまいている。 「まだ冬のはじまりだというのに、今年はずいぶんと冷えるなぁ」 　年老いた駅長はつぶやいた。 　チラッと窓の外を覗くと、月が煌々(こうこう)と…Read More »

お父さん、つまんない。 お父さんってなんか臭い。 お父さんのパンツとは一緒に洗濯しないでね！ 親として成長は喜ばしいもの。 娘も今じゃすっかり大人びた。 思春期ともなれば、父親という異性は気に触るものだ。 お父さんと同じ…Read More »

女はある瞑想プログラムに参加した。 「大きく息を吐いてください。頭と心が空っぽになっていくでしょう」 参加者は座禅を組み、目を閉じる。 女は無になろうと試みたが―― あっ、食後のアイスって買ってあったかな？ 「心を無にし…Read More »