そろそろ体力の限界かな。 　この仕事から身を退(ひ)くことを考えはじめたのは数年前。思うように身体が動かなくなっている自分に気づいたからだ。 　素性を明かせないこの仕事。誰にも顔を見せてはならないし、誰かに知られること…Read More »

いい夢が見られますように。 初夢に期待しつつ、わたしは眠りに落ちた。 憧れの先輩との理想の恋愛。 手をつなぎ、仲良くデート。 夜はレストランで食事。 先輩が予約したホテルでお泊り。 ドキドキして過ごす夜。 まさか、初夢で…Read More »

スタートラインから一斉に走者が駆け出した。 「わぁ、なんだこの荒れた道は！」 「わたしの道は落とし穴ばっかりなんだけど……」 「えぇ!?　この坂を登るのかよ」 選手は各々、口にした。 「いいなぁ、君のは平坦な道で」 「い…Read More »

かれこれ何時間か。 ほとほと腕も疲れてきた。 夜闇の澄んだ空気のなか、寺院に厳かな音が響き渡る。 それにしても人間というのは欲深い生き物。 「おい、今、いくつ撞いた？」 撞木の紐を手に、修行僧に尋ねた。 「もはや、数えて…Read More »

部屋に敷き詰められた日用品を見て驚愕する。 「これは何だい？」 「買い置きだよ。万が一の備えさ」 誇らしげにズラリ並ぶ商品を指差す友人。 「しかし悩みがあってねぇ……」 「置き場所のことかい？」 「違うよ」友人は首を振る…Read More »

「君、Ｍ社との取引が打ち切られたじゃないか！」 意気消沈する社員を、部長が叱責する。 「申し訳ございません……」 「どう責任を取るつもりだ？」 「切腹します！」 「は？」呆気にとられる部長。 「腹を切って責任を取ります！…Read More »

少女は祈る。 「争いのない世界に生まれてこれますように」 爆弾は無慈悲にも彼女の住む町を焼き尽くした。 気づくとそこは、真っ暗闇の世界。 彼女は浮遊する。 何も見えない。 何も見なくて済む。 地位も権力も差別も争いもない…Read More »

解答用紙に赤ペンが走る。 目の前で答え合わせされると、さすがに落ち込む。 想像以上に不正解が多い。 「間違いが多いですねぇ」 「はぁ……」 「正しい選択ができなかったのでしょうか」 「まぁ……」 「間違いだらけの人生です…Read More »

将来が不安だなぁ。 博士は自分の老後を憂いボヤいた。 晩年を不自由なく過ごすため、博士は介護ロボットを開発することにした。 しかし、開発は難航。 苦戦した博士は、ますます老いることに。 「これはマズい……」 開発できるま…Read More »

サンタクロースがテクテクと歩いてくる。 「あれ？　トナカイはどうしたんですか？」 サンタはニッコリ微笑んで言う。 「言うこと聞かないから置いてきたんだよ」 今年はプレゼントを届けるの大変ですね――と言い残した。 それ違い…Read More »