真っ赤な梅干しの中から生まれた赤鬼の子。 その名を梅太郎と名付けられた。 みるみる成長した梅太郎は、泣く子も黙る立派な鬼に。 島の鬼たちは、梅太郎に望みを託した。 恨みを晴らしてくれと。 「先代の仇ですね」 梅太郎はこん…Read More »

雪が降った。 家から飛び出すと、辺り一面、雪景色。 ボクは嬉しくなって、友達を呼びに行ったんだ。 雪とじゃれ合うように、ふたりで遊んだ。 雪に埋もれて遊んでいると、友達がいなくなっちゃった。 「おーい！」 どこに行ったん…Read More »

殺し屋の男はひと仕事終え、アジトに帰ってきた。 「珍しいじゃないか」仲間が声をかける。 男は洗面台の前に立ち、入念に手を洗う。 「予防だよ。妙な菌にやられないように」 「命知らずのお前が？」仲間は笑う。 手洗いを終えると…Read More »

なるほど、こことここが黒か。 で、上と下が、白。 さて、どう攻めるか。 なかなか手強そうだな。 眉間に皺を寄せ、じっと睨む。 漂う緊迫感に、相手の口もあんぐり。 ちょっと待てよ。 ここで、銀、という手もあるな。 ふふふ、…Read More »

「和食がお好きなんですね！　この店を選んでよかったです。和食って栞(しおり)さんの雰囲気にピッタリですよね」 　創作居酒屋の個室で正和(まさかず)と栞は、緊張した面持ちで食事をしている。 　結婚相談所の紹介で知り合った二…Read More »

強盗犯が人質をとり、雑居ビルの一室に立て篭もった。 周囲には報道陣が集まり、その様子が全国に報じられた。 犯人が一人で銃を構える映像が流れる。 「ん？　人質はどこにいるんだ？」 ニュースを見た視聴者が呟く。 そのビルは飛…Read More »

僕らは愛し合ってはならない。 そう告げると、彼女は目を潤ませ訴える。 頭では理解できても、心は求めてしまう。 ダメだ。キズつくだけだ。 「ほら、ごらん？」 僕は上を指差し、彼女は泣き叫ぶ。 僕の身体はつまみ上げられた。 …Read More »

少年たちが深夜の墓場に集まった。 どうやら肝だめしをするらしい。 はしゃぎ回る少年たち。 「おい、見ろよ……」 ひとりの少年が声を震わせる。 掘られた名前が消え、墓場中の墓石がツルツルに。 「今日は死者が蘇る記念日ですな…Read More »

カメレオン俳優と謳われる彼。 好青年だろうが狂人だろうが、完璧になりきり、役をこなす。 芝居がすべての人生。 ある日、彼は思う。 「本当の俺はいったい？」 彼は完全に自分を見失った。 そんな彼は結婚し、正常な人生を取り戻…Read More »

抽象的な概念を可視化する装置。 画期的な発明に、博士は自画自賛した。 助手を呼びつけ披露する。 「何を可視化して欲しい？」 「じゃあ、希望でお願いします」 博士は装置のスイッチを押した。 「あれ？」 目の前には何も現れな…Read More »