「黒だったのに、今じゃ白かぁ」 マネージャーは手帳を見て嘆いた。 「どしたの？」 「ウチのタレントのスケジュールさ」 「ああ、炎上タレントね」 「仕事がビッシリで真っ黒だった手帳も、例のスキャンダルで炎上して真っ赤っか。…Read More »

「おひとり様でしょうか？」 「はい……まだ席はあいてますか？」 「お席はいくらでもご用意できますので」 男は胸を撫でおろす。 「帰りの便は――」 「お戻りになりたい時が帰りの便でございます」 解き放たれるように、男は飛行…Read More »

うつ伏せで眠る男。心地よさそうに寝息をたてている。 その横でスマートフォンをイジる女。 男は受付で１時間コースと告げていた。 開始して３分。すぐに寝入ってしまった。 眠りから覚めた男は満足して帰っていく。 女は名マッサー…Read More »

亡くなった主人が夢に出てきましてねぇ。 主人のことを深く愛していましたから── その手に引かれるまま、ついて行ったんですの。 まさか、行き着く先があの世だったなんて。 でも、後悔はありませんわ。 再び主人と一緒になれて。…Read More »

「寝てばっかりいないで、人生もっと好きなことして楽しんだほうがいいぜ」 海外旅行帰りの知人が得意げに言う。 「俺の好きなこと？　寝ることだけど」 男は思う。 寝るのが好きな人間は、寝てばっかりいることがすなわち幸せなんだ…Read More »

「どうしてあんな危険な運転を？　よそ見するにもほどがあるぞ」 「あの医師のせいよ！」金切り声をあげる女。 「医師？」 「手術は成功したって言ったくせに――全部嘘だったのよ！」 「何があったんだ？」 「せっかく脱毛したのに…Read More »

成長にはキズがつきものだ。 物心がつき青春を迎える。 それにつれ、キズはどんどん増える。 しかし、やがてキズはつかなくなるもんだ。 それはそれで実に寂しい。 さらに年を重ねれば、キズを眺め、思い出に耽ったりもする。 常に…Read More »

さて、どうしたもんか。 博士は首をひねる。 驚きの発明に、つい浮かれてしまった。 スイッチをオン。 時を止める装置は、見事に作動。 「おぉっ！」 喜びも束の間。 驚愕の事実に気づいてしまった。 「止めた時を再び動かす装置…Read More »

ゴミ人間。 父は周囲からも家族からもそう呼ばれていた。 働かず、ギャンブルに明け暮れ、挙げ句の果てには母に金をせびる。 絵に描いたように堕落した人間。 そんな父が死んだ。 火葬場で骨上げしようとした時だった。 「え？」 …Read More »

時空が歪んだ。 それは紛れもない違和感として感じ取れた。 「あれ？」 隣にいた君がいない。 当たり前のようにそばにいた、君がいない。 もしかしたら、時空の歪みに飲み込まれたのかもしれない。 あの日から、僕の隣に君はいない…Read More »