立てこもっているとの報告を受けた。 私は慌てて現場に駆けつける。 果たして、踏み込んでいいものだろうか？ でも―― 何かあってからでは遅い。 私は意を決した。 そう。私は教師。 踏み込んでもいいはず。 男子トイレに。 「…Read More »

「笑顔が素敵な奥さんだね」 同僚が妻を褒める。 「まぁ、出会いが出会いだけにね」 当時、妻は飲食店で働いていた。 「ご注文は？」 俺はひと目惚れしてしまった。 「あっ、スマイルをひとつ」 彼女は天使のような笑みをたたえた…Read More »

ショッピングモールの催事場。 「ちょっと見ていいかしら？」妻が言う。 「このシャープナーで研げば、何でもたやすく切れるように！」 販売員が実演する。 「ほんとに何でも？」 「にんじんもカボチャもご覧のとおりっ！」 「人間…Read More »

僕の父さんは、パイロットなんだ。 僕の父さんは、プロ野球選手なんだ。 僕の父さんは―― 「証拠を見せてみろよ」と詰める友人たち。 いっこうに父親に会わせない彼のことを、皆は嘘つきと呼んだ。 「またな」 そう言い残し、家か…Read More »

「また、どうして平屋から二階建てに？」 隣人が工事の様子を眺めながら尋ねた。 「息子の成長がねぇ」 「なるほど。平屋じゃ手狭になりますわな」 「柱を上に伸ばそうと思いまして」 「柱を？」 「息子の成長記録で、柱にキズをつ…Read More »

「ねぇ？　僕のこと覚えてる？」 　無邪気な顔をした少年が声をかけてきた。あまりにも突然のことに戸惑いながら、少年を見下ろす。なんだか覚えているような、覚えていないような。 「クラスで一緒だった僕のこと、覚えてない？　たま…Read More »

「とうとう俺たちも卒業かぁ」 「寂しくなるな」 少年たちは口々に思い出を語り合った。 「そうだ！　記念にタイムカプセルを埋めよう！」 20年後の自分たちに向けて手紙を書いた。 校舎の木の下を掘る。 「ん？」 何かに触れた…Read More »

山中に死体が遺棄されたが、肝心の死体が見つからない。 未解決事件。 その山中を車で走ると、霊に出くわすらしい。 今では有名な心霊スポットに。 「うわぁ！」 また、霊に遭遇した人が現れた。 証言によると、霊はしきりに指をさ…Read More »

「あぁ、また眠れない」 悩みごとが女を眠れなくさせていた。 「また朝になっちゃうのかな……」 ポツリと呟く。 そろそろ空が白み始める。 「もうちょっとで眠れそうなのに」 それからしばらくたっても、空は薄暗いまま。 気づけ…Read More »

知ってるんだ。どうせ、ウソ泣きしてるんだろ。 え？ それが偽りの涙だってわかってるんだ！ とどまることなく目から溢れ出す。 信じて！ 苦しいのはわかる。でも、君はウソの涙で僕らを騙すんだ。 じゃあ、この涙は何だって言うの…Read More »