「ちょっと何してるのよ!?」 妻が我が子を抱きかかえる。 「ちゃんと見ててって言ったじゃない！」 目を離したすきにクレヨンを食べてしまった。 「おむつだってはかせてないし！」 「ごめん」夫は平謝り。 小競り合いをよそに子…Read More »

過去を振り返ってごらん？ それって本当にあったことかい？ そう言われれば、自信がなくなってきたろ？ 真実はねぇ―― 君は今朝、この世に産まれてきたばかり。 そして眠りにつくと同時に死ぬ。 君の過去が本当にあったって証明で…Read More »

自分には誇れるものが何もない。 ただ生きているだけ。 生きる意味を見出せず、死にたいとすら考えた。 何も起きず、何も起こせない人生の中で。 自分にできることはないのか？ 男は苦悩しながらも生き続けた。 そして、世界一の長…Read More »

女が添い寝して子供を寝かしつけている。 なにやら、口をパクパクさせながら。 子供は不思議そうな顔。 音のない寝室には、うっすら月明かり。 「ママ、子守唄は？」 女はヒットチャートを賑わす国民的人気アイドル。 そんな彼女が…Read More »

ぐるりとパドックを眺め回す。 「体重も増減がなさそう。肌の感じもツヤツヤしてるしね！」 「６番に決めるかい？」 「そうだね。３番も良さそうだけど」 馬に引かれた人間が、レースを前に鼻息を荒くする。 「たまに競人場に来ると…Read More »

　蒸し暑さが夏の訪れを感じさせるある日、彼はこの村へとやってきた。 　これまでこの村を訪れた人たちと同じく、彼も探しものをするために、ここへやって来たらしい。 「あなたも記憶を？」 「えぇ。ここに来れば見つかると聞いたも…Read More »

この町に引っ越してきて、半月ほど経ったある夜。 夜道で偶然、クラスメイトに会った。 彼はその手に傘を持っている。 「雨なんて降りそうにないけど――」 「そうか！　君はまだ知らないんだね」 彼は周囲を指差す。 よく見ると、…Read More »

立てこもっているとの報告を受けた。 私は慌てて現場に駆けつける。 果たして、踏み込んでいいものだろうか？ でも―― 何かあってからでは遅い。 私は意を決した。 そう。私は教師。 踏み込んでもいいはず。 男子トイレに。 「…Read More »

「笑顔が素敵な奥さんだね」 同僚が妻を褒める。 「まぁ、出会いが出会いだけにね」 当時、妻は飲食店で働いていた。 「ご注文は？」 俺はひと目惚れしてしまった。 「あっ、スマイルをひとつ」 彼女は天使のような笑みをたたえた…Read More »

ショッピングモールの催事場。 「ちょっと見ていいかしら？」妻が言う。 「このシャープナーで研げば、何でもたやすく切れるように！」 販売員が実演する。 「ほんとに何でも？」 「にんじんもカボチャもご覧のとおりっ！」 「人間…Read More »