悔しい時、寂しい時、この道を行こう。
もちろんあの映画の余韻を引き下げて。
準備は全く要らない。
いま感じた気持ちのままに。
キーを持ったら、玄関抜けて。
薄暗い朝もやけの中。
飛び出そう。
もちろんあの映画の余韻を引き下げて。
右手にはB・O・S・S
テーマソングはハイロウズ。
まだ肌寒い朝。
昨日の夜とはバイバイしたし。
後は帰り道辿(たど)るだけ。
行きしの自分は昨日の自分。
今から、たった今から、ここで死んでも後悔しない。
ここで生きても後悔しない。
ガレージの重いトビラを開けた時。
一瞬寂しくなるけれど。
昨日の自分も。
昨日の荷物も。
値札を全て外した後に。
一つ残らず捨てて来た。
もちろんあの映画の余韻は引き下げて。
エンジンかけた。
アクセル踏んだ。
これから何処へ行こう。
これから何を見よう。
見慣れた道が後ろの方へ。
どんどん消えて行く。
中央環状線。
いつもこの道の上。
どこへ続くか分からない。
どこで落ちるか分からない。
落ちても後悔しないから。
落ちるトコまで行ってみたい。
ハイロウズの調子は最高。
ヒロトの声もかすれてる。
マーシーのギターも唸(うな)ってる。
窓から投げたタバコの灰が。
目の前を霧のように散ってった。
もちろんあの映画の余韻は残ったままで。
地面からおよそ九ミリ。
その上を体が流れてる。
何処まで行っても変わらない。
何処まで走っても変わらない。
中央環状線。
いつもこの道の上。
もしかしたら天王寺に行きたいかも。
西成あたりに行きたいかも。
古い荷物は捨てたから。
もちろん地図すら捨ててきた。
磁石も何も無いままに。
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、ずっとずっと中央環状線。
右に曲がろうと思ったから。
真っすぐ進んでみた。
真っすぐ進みたいから、真っすぐ進んでみた。
地獄の果てまで行けるかも。
天国なんかは行きたくないけど。
理由は一つ。
生きていたい。
生きてもちっとも楽しくない。
生きてもちっともおもしろくない。
生きても全然うれしくない。
生きても全然偉くない。
でも、死んでもちっとも偉くない。
死んだら全然偉くない。
楽しみたいからとか。
おもしろくいたいからとか。
うれしくなりたいからとか。
偉くなりたいからとか。
そんなモノの為に生きたいわけじゃない。
理由は一つ。
生きていたい。
ただ、それだけ。
前には車も人影もない。
一番好きなあの子の為に。
アクセル踏んで中央環状線。
一番憎いあいつの為に。
アクセル全開 中央環状線。
飛べそう。
飛べそう。
空には魅力を感じないけど。
一回は飛んでみたい。
二回でもいい。
三回飛べたら言うことなし。
とにかくこれが俺の道。
この道の上に居る限り、俺の道。
実は、すっごく寂しいけれど。
俺の道には俺が居る。
俺の道だから、誰も入れない。
俺だけが居ればそれでいい。
寂しがり屋の言い訳じゃない。
何故なら。
何故なら。
「今、俺は、めっさカッコイイからなのだ。」