十月六日、大阪にアホがおった。そのアホはグレルことも悪ぶることも出来ないアホやった。でも、アホは夢を見るのが好きやった。寝てる時に見る夢も、起きてる時に見る夢も好きやった。そんなアホもハタチを過ぎればさすがに人生を考えた。マジメじゃないけど考えた。アホでも考えることは出来る。考えることは出来た。よかった。よかった。
アホはバカという言葉も世の中に在ることを知って一つ賢くなった。よかった。よかった。
アホにも好きな人がいた。その人もアホでした。アホはアホのことが好きやった。
偶然にもアホもアホのことが好きやった。なので、アホとアホは付き合うことにしました。アホとアホが見る景色には、純粋な白ばっかりが映っていました。アホの特技は「無知の知」それだけでした。でも、それは他の人には誰にも備わっていない特技でした。でも、アホなので、その特技を自慢することをしませんでした。それが自慢出来ることやってことにすら、気づいてなかった。
これも「無知の知」よかった。よかった。
アホが働くところといえばこんな所。きっとみんなが想像してる通りの様なトコ。そう、そこです。そこなんです。
アホやから精一杯働くことしか出来ません。それもアホの特技の一つなのかもしれません。アホやからしょうがないけど・・。
アホはアホなりに仕事をこなして行った。アホはその仕事に喜びも感じていました。アホなので純白な景色しか見えません。普通の人は物事をたくさん知って行く度に灰色になって行くでしょ。でも、考えてください。アホは前しか見てません。だって、アホやから。
周りの上司たち、先輩達はアホのことをアホと呼びました。もちろんけなしているんです。でも、考えてください、アホなのでアホと呼ばれることは嬉しい事でした。部長に部長と呼んでいるのと何も変わらん事やから、アホにとっては光栄なこと。すさまじく光栄なこと。よかった。よかった。
あー、毎日が単調すぎて平凡すぎて、それでいて結構しんどくて、やりきれんわー。って思ったことないですか?きっと誰しもが思ったことあると思うんです。そう、アホも今まさにそう思ってる時やねん。だからと言って、アホとおんなじことを思ってるからって、あなたもアホやなんて思わんといて下さい。あなた方はアホじゃないです。アホにはなれません。アホをアホと思ってるでしょ。アホはアホのことをアホやなんて思いません。だから、あなたはアホじゃないんです。
月日は流れ流れていきます。不思議と終わることを知らないのです。不思議すぎて当たり前のようになってしまっていることの一つ。
そんな時間の流れに沿うようにアホも結婚を考えるようになったのです。アホが結婚なんて出来るのか?と思う人もいるかもしれんけど、普通の人だって難しいと言われる結婚なんやから、アホでも出来るでしょ。そう思いませんか?
アホとアホやから、夢中で愛し合います。五年経とうが十年経とうがずっとずっと愛し合います。これも、アホにしかできやん事かもしれません。そして、ケンカもしながら擦(す)れあってアホとアホはめでたく結婚しました。結婚をしたんです。幸せな話です。アホには自(おの)ずと幸せのほうから寄って来るらしいですよ。マジな話。
アホとアホは幸せに暮らしています。そして、子供も生みました。もちろんアホとアホの子やから、アホが生まれたことに疑問を持つ人はさすがにいないと思います。アホとアホとアホはある意味最高の家庭で、最高の人生を送っています。休みの日にはキャッチボールをします。映画を観に行ったり、ディズニーランドにも行きました。もちろんファミリーレストランにはよく行きます。アホはとてつもなく楽しいのです。アホやから。しょうがない。
順調に、順調に月日は流れて行きました。
アホみたいに年をとって生きました。
毎日笑ってました。
いっつも笑ってました。
テレビを見てても笑ってました。
親友の死には涙しました。
でも、親友の気持ちを思い笑いました。
明日も笑ってました。
来年も笑ってました。
最後の最後も笑ってました。
笑って終わりました。
笑って終わりました。
笑って。